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「私の経験が女子選手の励みになりますように」 島田朱諒の高校球児への想い

突然ですが、野球するのは好きですか?

この質問に元気よく「はい!」と答えてくれる女の子が全国にはたくさんいることでしょう。

その中に男子野球部で高校野球をしている女子選手はどれくらいいるのでしょうか。

もちろん地域によると思いますが、おそらく県内1学年に1人いるか否かといったところでしょう。

今回は、全国的にも珍しいといえる女子選手の皆さんに伝えたいことを私の経験を踏まえてお話します。

私も高校生の頃、男子野球部でプレーする女子選手の1人でした。

静岡県の磐田南高校で男子と共にプレーしていました。

地元の公立高校で野球をすることを選んだ私は入学当初、期待と不安の両方を抱えていました。中学野球と高校野球は全くの別世界。野球のレベルも選手の意識も違っていました。しかし、先輩も同級生もすんなりと私のことを受け入れてくれたように思います。キャッチボールもノックも他の選手と差をつけて扱われることはことはありませんでした。それが何よりもありがたかったです。(食トレで毎日練習後に男子選手と同じ量のご飯を食べるのだけは大変でしたが…。)

こうして始まった高校野球生活ですが、2年半を通じて必死でした。練習に参加させてもらっている以上、同じレベルで野球をしなければなりません。毎朝早く登校してティーバッティングをしていましたし、守備練習は練習後の自主練習を欠かしませんでした。練習で自分だけできないのが悔しくて、置いていかれたくないという一心でした。もちろん練習は真剣ですが、練習以外では野球部の仲間とふざけあったり、笑いあったりすることもありました。時には喧嘩もしました。しかし、すべてを含めて充実した時間・良い経験だったと思います。野球選手に限ったことではありませんが、今、目の前にあることに全力で取り組むのが1番楽しく、有意義なものになると私は思います

男子と同じレベルで野球をするため、必死になって練習についていきました。

とはいえ、人一倍悔しい思いをするでしょう

私が一番嫌いだったのは罰ゲームが連帯責任となるメニューです。例えば、リレー形式のベースランニング。私はクラスの女子の中では一番足が速かったのですが、男子野球部の中に入るとダントツで遅いという立場でした。自分が入ったチームが明らかに不利になると分かっています。もちろん、全力で走るんだけれども「迷惑かけてごめん。」と思っていました。罰ゲームで自分が辛い思いをするのは良いのですが、周りを巻き込んでしまうのが申し訳なくて…。

例としてリレー形式のメニューを挙げましたが、他にも階段ダッシュで周回遅れになり他の選手の邪魔になる、綱引きで圧倒的不利になる、など書き出したら切りがありません。男子野球部で活動している女子選手が集まると必ずと言っていいほどこの話題になります。誰もが経験するポイントといってよいのかもしれません。

高校野球には辛い練習メニューもたくさんあります。

今考えると、悔しい思いをしながらも頑張ることができたのには2つの理由がありました

一つは自分と同じように男子野球部で頑張っている女子選手の存在があったことです。

私は高校1年生の夏から高校3年生の夏まで計5回、丹波連合として高校女子硬式野球の全国大会に参加しました。その時のチームメイトと出会ったことは私に大きな影響を与えました。私にとって女子選手と野球をするのはほとんど初めての経験でした。丹波連合では大会の約1週間前から合宿を行います。普段は言えないような悩みも、同じ立場だからこそ共感したり励ましあったりすることができました。そして、大会が終わったらまた全国各地の、それぞれが所属するチームに戻っていきます。「次会う時までにもっと上手くなろう!」と思えたことが、次の大会までの練習に打ち込むモチベーションになっていたことは間違いありません。

丹波連合での活動が高校時代のモチベーションになっていました。

もう一つは普段の練習環境です。練習のとき周りを見渡すと、私を受け入れてくれた仲間がいました。当たり前のように男子に混ざって練習していましたが、よく考えると当たり前ではないのだと気づかされました。キャッチボールも、守備練習も、バッティング練習も、トレーニングも女子だからといって手加減されることはありません。技術面で足りない部分を指摘されることもたくさんありましたが、選手として認めてくれているからこそ指摘してもらえるのだと思います。他にも、全体練習以外の自主練習でアドバイスをもらったり、元気づけるような言葉をかけてもらったりしました。男の世界ですから、優しい言葉で励ますというよりは発破をかけてくれたという表現が適切かもしれませんが。

しかしながら、女子選手は公式戦に出られないというルールがあるため目標が立てにくいという悩みはよくわかります。私は高校時代に2つの目標を掲げていました。

1つは丹波連合での活躍。2つ目は野球部内で他の男子選手に刺激を与える存在になること。試合に出られない以上、試合でのプレーでチームに貢献することはできません。しかし、練習や練習試合で良いプレーをしたり結果を残したりすることができればチームメイトの刺激になるでしょう。つまり、「あいつが頑張っているんだから俺も頑張ろう!」と思ってもらうことが目標でした。

大学生になった今思い返すと、チームメイトを含め多くの方に支えられて高校野球生活を送っていました。当時も理解していたつもりでしたが、十分ではありませんでした。環境のありがたみを知るのにはしばらく時間がかかるもので、当時伝えられれば良かったのですが、高校野球をともにやり抜いた仲間には本当に感謝しています。

ここまで、私の高校野球での経験や当時感じていたことを書いてきました。男子野球部で頑張っている女子選手にとって、少しでも参考になる部分があったら嬉しいです。彼女たちが素晴らしい高校野球生活を送ることができるように願うとともに、エールを送ります。そして、全国の女子選手を応援しています!

この記事が1人でも多くの選手の励みになれば幸いです。

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