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女子野球レジェンド対談「里綾実×志村亜貴子」

先日、2022年にアジアカップ、2023年・2024年にワールドカップが開催されるとの発表があり、日本代表選手候補27名が決定した女子野球。日本の女子野球は世界を牽引する存在で、W杯では大会6連覇を達成するなど圧倒的な強さを誇っています。

今回は、W杯3大会連続MVPの里綾実選手と6大会連続出場で3度主将を務めた志村亜貴子選手にお話を聞かせていただきました。両選手は現在、埼玉西武ライオンズ・レディースに所属し、日本トップのレベルで現役を続けています。

【里綾実(さとあやみ)】
1989年12月21日生まれ。鹿児島県出身。
小学校3年生で地元少年野球チームで野球を始め、女子野球の名門・神村学園高等部、尚美学園大学へと進む。2013年から女子プロ野球リーグに入団し、退団後の2020年から現在まで新設の埼玉西武LLに所属。大学2年時に初めて日本代表入りすると、その後は6大会連続の選出、3大会連続で大会MVPを獲得し、日本代表のW杯6連覇に貢献しています。

[経歴]
神村学園高等部
尚美学園大学
レイア(2013-2014)
愛知ディオーネ(2015-2019)
埼玉西武ライオンズ・レディース(2020-)

[日本代表歴]
2010年 第4回女子野球W杯(最高勝率・先発投手ベストナイン)
2012年 第5回女子野球W杯(救援投手ベストナイン)
2014年 第6回女子野球W杯(大会MVP)
2016年 第7回女子野球W杯(大会MVP・先発投手ベストナイン)
2018年 第8回女子野球W杯(大会MVP)
2021年 第9回女子野球W杯(開催延期)

【志村亜貴子(しむらあきこ)】
1982年11月9日生まれ。北海道出身。
地元北海道の軟式クラブチーム・札幌シェールズで女子野球を始め、その後に日本代表での活動に合わせて硬式のホーネッツレディースを仲間と共に立ち上げる。その後は東京の名門企業・アサヒトラストでプレーし、2020年から現在までは埼玉西武LLに所属。女子野球W杯には第2回から第7回まで連続出場。第8回W杯、第2回アジア杯ではコーチを務めています。

[経歴]
北海道浅井学園大
札幌シェールズ
ホーネッツ・レディース
アサヒトラスト
埼玉西武ライオンズ・レディース(2020-)

[日本代表歴]
2006年 第2回女子野球W杯
2008年 第3回女子野球W杯
2010年 第4回女子野球W杯(外野手ベストナイン)
2012年 第5回女子野球W杯
2014年 第6回女子野球W杯(主将・外野手ベストナイン)
2016年 第7回女子野球W杯
2018年 第8回女子野球W杯(コーチ)
2019年 第2回女子野球アジア杯(コーチ)

今回は女子野球界のレジェンドであるお二人に、

女子野球W杯での思い出について

日本代表選手の凄さと下の世代の選手に学んで欲しいこと

女子野球の更なる発展に向けたイベントの開催やプロジェクトへの参加について

ということをお話しいただきました。女子野球選手はもちろん、野球やスポーツに関わる全ての人に読んで欲しい内容です。

きっかけは“ケア最後組” 両選手のW杯での出会いと思い出

── お二人は長年にわたって日本代表として活動し、現在も埼玉西武LLで共にプレーしています。お二人が行動を共にするようになったのはいつ頃からですか?

里選手:初めて会ったのは2008年ですね。愛媛で開催された第3回W杯の代表候補が参加する最終合宿で一緒にプレーしていました。私はその時が初めての代表参加で一杯一杯だったのと、最終選考で落ちてしまったこともあり、志村さんを含め他の代表の方々と話すことはほとんどなかったです。

志村選手:私はあまりいろんな選手と絡む方ではないので…里ともいつ頃からだろうね?

里選手:2010年のベネズエラでのW杯で少しずつ話すようになったと思います。本格的に話すようになったのはその次のカナダ大会とかからじゃないですかね?

志村選手:そうだね。カナダぐらいからは喋ったりしてた記憶があります。

里選手:志村さんと話すようになったのは、二人とも“ケア最後組”だったことがきっかけだと思います。というのも、W杯期間中はトレーナーさんが帯同してくださり、選手のケアをしてくれていたのですが、私はケアの時間を長く取りたかったので、「みんなが終わってからで大丈夫です」と後ろの方でやっていました。

そこでうつ伏せで無防備になっていると志村さんが足首の痛いところを押してくるというところから始まったと思います。志村さんとか中島さんとかが“ケア最後組”で、そこで喋るようになりましたね。

志村選手:その後のW杯からは結構一緒に行動するようにもなりました。

── なるほど。海外遠征ならではのきっかけがあったんですね。それでは次に、お互いにW杯で印象に残っていることを教えてください。

志村選手:今でもそうなのですが、「困った時の里」みたいな感じで、ランナーが溜まったピンチの時に登板して、それをしっかりと抑えてくれるということはどの大会でも印象的です。一つあげるとしたら、宮崎のW杯での決勝での里がすごく印象的でした。先発して序盤にピッチャーライナーが当たったのに最後まで投げ切って勝ったのがすごいなと思って。相当痛かったと思うんだけど…

里選手:めっちゃ腫れました(笑)

志村選手:日本開催でお客さんも結構入っていた中で投げ切って勝ったことが凄く印象に残っています。

里選手:天気が悪く中断もあったので、途中でアクシデント交代をしたら試合の流れが変わってしまうなと。日本開催の決勝戦の先発を任されたので、流れが向こうにいってしまわないように、いつも通りの試合ができるようにと思っていました。踏み込む足の足首に打球が当たって、スパイクを一回脱いだら履けないくらい腫れていましたが…

── 里さんから見て志村さんの印象に残っていることは?

里選手:同じ宮崎の大会で選手宣誓をしたことが凄く印象的でした。自国開催でキャプテンの志村さんが選手宣誓を務めたのですが、それを英語でやっていたのが凄いなと。私は英語は分からないので、何を言っているのかは分からなかったんですけど(笑)

志村選手:私も英語は全然なので、その時だけ覚えました(笑)覚えるのは得意なのですが、発音ははちゃめちゃだったと思います。

里選手:チーム全体も見なければいけない、自分のプレーもしなければいけない、そして選手宣誓を英語で、やることが多すぎるなと。しかも自国開催で優勝するのが当たり前という雰囲気の中でのプレッシャーもあって、きつい大会だったと思います。そして夜には私の足の弱いところを押しにくるという…(笑)

『日本代表選手はここが違う!!』 両選手が考える女子野球選手に必要な能力とは?

── 里さんから見て、志村さんのキャプテン姿が印象に残っているとのことでしたが、キャプテンを務めたのはどの大会ですか?

志村選手:カナダ・宮崎・韓国の3大会ですね。

── 3大会連続だったんですね!1選手としての参加とキャプテンとしての参加はやはり全然違うものなのですか?

志村選手:そうですね…自分のプレーよりもとりあえずチーム優先という考えに切り替えました。ただ、代表の選手は言われなくても自分の役割がわかっているので、キャプテンとしての苦労はそこまででもないです。それくらい代表の選手は全てがレベルが高いです。プレーだけではなく、意識の部分でも。

── なるほど…日本代表をまとめるキャプテンとなるともの凄く苦労するのではないかと思っていましたが、選手一人ひとりのレベルが高いからその苦労は少なくなるんですね

里選手:代表の選手は状況を見てプレーや行動ができているなと思います。国際大会では、アップ時間がバラバラだったり、スケジュール変更も当たり前にあるので、そういうところにも対応したりできないといくら力があっても活躍できないと思います。

志村選手:いくら普段めちゃくちゃ打っている選手でもダメな選手はダメですね。

里選手:志村さんはそういう部分も本当に凄いと思います。自分のスタイルを確立した上で、状況に応じて最悪自分が犠牲になってもランナーを進めようとか、状況に応じたプレーをすぐにやれるということを後輩選手たちは背中を見て学んで欲しいと思います。そういう選手も今は少ないので。

── 志村さんの凄いところ、今の選手たちに学んで欲しいところはそういう部分だと。

里選手:そうですね。例えば「1番だからこうする」という様に、自分で考えるとかではなくこう教えられているからこうというような選手が多いと思います。野球は4番の人が先頭で出塁する役割を担うこともあるので、そういった臨機応変さが足りないのかな?と。そこをもっと突き詰めていけばレベルが上がると思います。

志村選手:私も同じ様なことを感じています。自分を犠牲にできない選手が多いかなと。自分や里は代表で監督に「チームのために自分がどれだけ犠牲になれるか」ということを学んできたので、自分のことばっかりで一杯一杯になっている選手が多いかなと思います。

里選手:逆にいうと、ただ技術的に上手いからとかではなくて、チームの中でどう動くかということを考えられる選手が代表に選ばれていると思います。

志村選手:里はプレーの部分ではもちろん、チームのことを考えて動いてくれることも凄く頼りになります。中にはただやっているだけの選手もいます。自分のことしか考えないという様な…そういう中でも里はチームの雰囲気作りをしたり、若い子に声をかけて引っ張ったりだとか、代表の時からそうでしたが、今でもすごく頼りにしています。

── 二人がいかに自分のプレー以外の部分も考えて野球をやっているのか、そしてお二人の信頼関係がいかに厚いのかということが伝わってきました。それではここまでの話を踏まえて、女子野球の更なる発展に向けてお二人の考えを聞いていきたいと思います。

「野球はみんなのスポーツ」を立ち上げ、選手主導でイベントを開催

── 女子野球の更なる発展に向けて、どのようなことが必要だとお考えですか?

志村選手:選手一人ひとりがいろいろなところに目を向けるべきだなと。環境が整って当たり前にできることが多くなってきてはいるのですが、もうちょっと先のことも見て欲しいなと。若い子たちに言うのもどうかなとは思うのですが、女子野球の未来のことを考えながらやって欲しいなという思いはありますね。

里選手:選手一人ひとりが未来を見据えないといけないですよね。

志村選手:じゃないともっと発展はしないのかなと。今楽しいからOKということではなく、もっともっと先を見据えないと。選手みんなが先を考えながらやった時、その先にどんな世界が待っているのか楽しみだなと思います。

里選手:私は与えられた環境でやるだけでは受動的だなと。女子プロ野球にも所属してプレーさせてもらっていたのですが、結局運営がやめますと言えばやめなければいけないということを実感しました。誰かがそういう場を作ってくれても無くなった時に何もできなくなってしまうという…

選手一人ひとりが自立し『こういう環境を作りたいからこうする』と考えて行動して欲しいです。周りの支援でいくら環境がよくなっても選手一人ひとりのレベルが上がらないといけないなと感じています。

── 連盟や自治体、スポンサー企業など様々な方々の協力で普及・発展しつつある女子野球ですが、選手の自立やレベルアップも当然ながら必要になってきますね。

里選手:そうですね。そういう思いで「野球はみんなのスポーツ」という法人を立ち上げて、少しでもその思いを下の世代に伝えていって、その子達が「自分が女子野球を引っ張っていくんだ」という意識を持ってこれからの女子野球界を担ってくれたらいいなと思います。

── 実績や経験が豊富な里さんや志村さんから下の世代の選手たちに伝えることで、意識の変化やレベルアップに繋がっていきそうですね。

里選手:そうなって欲しいという思いもあり、今回女子野球に関するあるプロジェクトに私と志村さんで参加させてもらうことになりました。そのプロジェクトはニカラグアに女子野球リーグを創設した阿部翔太さんという方がやっているプロジェクトで、ニカラグアの女子野球に関わるドキュメンタリー映像を制作し、日本の子供たちに見てもらうことで世界の女子野球の事情や夢を持つことの大切さを伝えるというプロジェクトです。

── 海外の野球・女子野球を支援するだけではなく、それを再び日本の子供たちに還元するというプロジェクトなんですね。そのプロジェクトを通して、一番伝えたいことはどの様なことですか?

志村選手:世界の状況を知らないで野球をやっているという子は多いと思います。日本ではこれだけ環境が整っていますが、世界には環境も道具もない中でそれでも野球がやりたいという女の子たちがいるということを知るべきだし、そのためにできることがあれば私たちも動くべきだと思います。日本だけが発展して日本だけが強いだけではやっぱり女子野球は世界的には広まらないと思うので、そういうことを考えるきっかけになって欲しいなと思います。

里選手:志村さんが話したことももちろんそうなのですが、私は“阿部さんの熱い思い”という部分も伝えたいと思っています。私たち選手のように当事者ではない阿部さんが熱い思いを持ってプロジェクトを行っています。私たち当事者はそこまで熱い思いを持って動いてくれている人たちに協力したいと思いますし、阿部さんたちの活動を広めることを通して行動を起こす大切さを伝えていきたいです。

これまで、野球を続けている仲間たちはそれぞれネットワークを持っていて、それぞれ思いがあるのになかなか繋がらないなと感じていました。一人ひとりの思いは強くても活かす場がないなと。今回のプロジェクトを通してそういう思いの人たちが集まって、何かしらの行動を起こすきっかけになって欲しいです。日本だけではなくて、世界で繋がればと思います。女子野球界は本当に苦労してきている人たちばかりだと思うので、お互い手を差し伸べられるような競技になっていったらと思います。

── 「野球はみんなのスポーツ」主催でのイベントも行うということを耳にしました。具体的にどの様なイベントなのかを教えてください。

里選手:11月26日に女子野球のイベントをやります。連盟やチームではなくて、個人・選手が主体でやりたいと思い、「野球はみんなのスポーツ」が主催で開催します。小学校3年生から中学校3年生くらいの世代を対象として、5イニングの試合・野球教室をして、その後に「今後の女子野球の未来について考えよう」というディスカッションをするというイベントを考えています。

── 選手主体でのイベント開催。今まではあまりできていなかった部分ですね。そちらのイベントに関してもぜひまた別でお話を聞かせていただきたいと思います!本日は長い時間、ありがとうございました。

里選手:ありがとうございました。

志村選手:ありがとうございました。

日本、そして世界の女子野球のトップを走り続けてきた里選手と志村選手。

言葉の節々から「女子野球界をもっと良くしたい」という思いを感じることができました。

そして現在は自分たちが行動することはもちろん、いかにして下の世代の選手たちに思いを伝えていくかということを試行錯誤しているという印象を受けました。

日本では「誰でも女子野球ができる」という環境に少しずつ近づいてきている中で、選手一人ひとりが与えられた環境でやるだけではなく、より良い環境を作っていくための行動が必要であると改めて感じた1時間でした。

里選手や志村選手の思いが下の世代の選手たちに伝わり、選手一人ひとりが成長していくことで女子野球はもっと魅力的で夢のある世界になっていくと思います。

これからもお二人の活動を応援していきます。

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