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高校女子野球から大学準硬式 憧れの甲子園の舞台へ

今年初めに「女子準硬式野球準備委員会」を立ち上げ、「女子選手の積極的な受け入れ」を表明した関東地区大学準硬式野球連盟。

『栃木さくらカップ』への参加や練習会の開催など、女子選手が活躍しやすい環境づくりを推し進めています

大学準硬式野球はダイバーシティ・インクルージョンや文武両道、社会に貢献できる人材育成という精神のもと、女子選手の受け入れの他にも海外遠征や学生主体の大会運営、女子野球の大会運営ボランティアなど、様々な活動を行っています。

今年11月13日に連盟設立75周年プレマッチとして甲子園球場で行われる東西対抗日本一決定戦も『甲子園で大会が行われる』ということ以外にも、選考に学業の基準を設けていることや、プロジェクトリーダーを学生が務めていること、全日本女子野球連盟と共催し午前中は女子野球の試合を行うなど、様々な新しい取り組みが行われます。

今回はその甲子園大会に東日本選抜の“ボールパーソン”として参加する熊田桜さん(東北学院大学)と平澤いちこさん(北海学園大学)にインタビューしました

熊田さんと平澤さんは高校時代は女子硬式野球部で選手として活躍し、大学進学後は準硬式野球部でマネージャーとして活動しています。大学準硬式で憧れの甲子園への切符を手にしたお二人に、甲子園への憧れや思い、大学準硬式の魅力、高校女子野球の後輩へのメッセージをお話しいただきました。

女子野球の名門・埼玉栄出身で、現在は楽天のボールパーソンを務める 東北学院大学・熊田桜さんインタビュー

【熊田桜(くまださくら)】
東北学院大学教養学部地域構想学科3年。準硬式野球部マネージャー。宮城県出身。
小学4年生の時に女子野球の大会に参加したことがきっかけで地元少年野球チームに入団し、中学は女子軟式クラブチーム・宮城ドリームガールズで主将を務める。その後、埼玉栄高校に進学し、名門・女子硬式野球部に入部。卒業後は地元の東北学院大学に進学し、現在準硬式野球部でマネージャーを務めています。

── 今回の甲子園大会への応募の経緯を教えてください。

熊田さん:清瀬杯に出場した際に連盟の方に甲子園大会でのボールパーソンの募集も行っていることを聞きました。選手以外も募集していることは知らなかったので、すぐに書類をもらい、その日に書いて提出しました。

── やはり“甲子園”への憧れはあったのですか?

熊田さん:もちろんありました。私が中学生くらいの時から「高校女子野球も甲子園で試合ができるようになるかも」という話は少し出ていました。高校でプレーしている間も、「自分の代こそは甲子園で」と願っていましたが、結局その思いも叶わなかったので…

── 現在は高校女子野球の決勝戦が甲子園で開催されていますが…

熊田さん:2個下の代で開催が決まった時は、「もう2年早ければな〜」と、どこにも当たることができない悔しさがありました。一方で、後輩たちに頑張って欲しいなとか、母校が甲子園で試合をするのを観客として応援できたらなという思いもあったので、悔しさと応援の気持ちで複雑でした…

── 今回、選手ではないですが、ボールパーソンとして憧れの甲子園行きが決まりましたね。

熊田さん:「まさか」というか、凄いチャンスをいただいたなと。どんな形であれ、甲子園は男女問わずいきたい場所だと思うので。

── ボールパーソンという役割についてはどうですか?

熊田さん:今、東北楽天ゴールデンイーグルスでボールパーソンのアルバイトをやっているので、その経験を活かせたらなと思います。審判さんとのアイコンタクトやボールを渡すタイミングなどを意識して、試合を止めることなくスムーズな運営ができたらなと思います。

── 今回の甲子園大会ではボールパーソン、大学の準硬式野球部ではマネージャーと、裏方としての役割を担っていますが、熊田さん自身は大学で選手を続けようとは思わなかったのですか?

熊田さん:女子野球部がある大学で考えた時に、自分自身が学びたい分野とは合わなかったので「やるとしてもクラブチームかな」くらいで考えていました。高校でも大学進学を考えながら勉強と野球を両立させながら頑張っていたので。

── なるほど。準硬式野球部でマネージャーをしていて一緒にプレーしたくなるということはないんですか?

熊田さん:やりたいなと思うことは多いです。それでも、外野ノックのキャッチャーをやったり、バッティングの守備に入ったりと、少しは選手目線になれているのかなと思うので、そこで満足している部分もあります。

── 関東地区大学準硬式野球連盟では『女子選手の受け入れ』を表明していたり、実際に男子の中で活躍する女子選手もいますが、『女子野球』と『準硬式野球』の双方を知る熊田さんの考えを聞かせてください。

熊田さん:女子高校野球が最近増えてきている中で、大学で現役続行を選択する子が増えていないと思います。“大学女子硬式野球”となると選択肢が絞られてしまいますが、“準硬式野球”であれば学部学科も自分がやりたいことを選んだ上で野球も続けられるので、そこは魅力の一つだと思います。

── 大学準硬式野球部には女子選手が活躍できる可能性はあると。

熊田さん:もちろん、大学によってはレベルも高く、男子選手には勝てない部分もあると思いますが、試合に出たり、活躍するチャンスがあるところもあると思います。私自身は女子野球と準硬式野球のどちらも応援していきたい気持ちがあるので、女子選手が大学で準硬式を選んでくれれば嬉しいなとは思います。

── もし熊田さんが大学を選ぶ際に『準硬式で女子が活躍できるかも』と知っていたら、今とは別の選択をしていた可能性もありますか?

熊田さん:そうですね。大学を決める際に、関東の大学も何校か考えていた中で「地元の東北学院と何が違うのか?」という部分で決定的なものがありませんでした。もしそこで準硬式という選択肢があることを知っていて、「そこで野球がやりたい」と思っていたら進学先は変わっていたのかなとは思います。私自身が高校生の時は準硬式というもの自体を知らなかったので、今でも『準硬式が選択肢にすら入っていない』という高校生は多いと思います。

── 準硬式で女子選手が活躍するために、まずは高校生に知ってもらうことが必要になりますね。それでは最後に、現在の高校生に向けたメッセージをお願いします。

熊田さん:自分が今やっているから満足ではなくて、女子野球をマイナースポーツからメジャースポーツにしていくために、一人一人が頑張っていけたらなと私自身は思っています。大学進学や学びたいことを第一に考えたとしても、色々な選択肢があるので野球を諦めて欲しくはないです。また、今の高校生は『甲子園』という大きな目標もあるので、決勝戦を目指して頑張って欲しいです。母校の埼玉栄にもぜひ決勝まで進出して欲しいです!!

札幌新陽高校女子野球部2期生として活動も3年時はコロナで大会が中止に 北海学園大学・平澤いちこさんインタビュー

【平澤いちこ(ひらさわいちこ)】
北海学園大学工学部建築学科2年。準硬式野球部マネージャー。北海道出身。
小学1年生で兄の影響で野球を初め、地元の少年野球、中学校で男子と共にプレー。高校は当時北海道唯一の女子硬式野球部があった札幌新陽高校に進学。2期生として女子硬式野球部で活動するも、3年時にはコロナの影響で大会は中止に。卒業後は北海学園大学に進学し、準硬式野球部でマネージャーを務めています。

── 今回の甲子園大会への応募の経緯を教えてください

平澤さん:「甲子園で大会がある」と聞いた瞬間にすぐに「いきたいです」とキャプテンに伝えました。

── やはり甲子園への憧れは強かった?

平澤さん:もちろん憧れはありました。中学3年生の時に札幌新陽高校に北海道で初めて女子野球部ができたので、高校では女子野球部を選びましたが、元々は男子野球部の強豪校のマネージャーとして甲子園を目指そうと考えていたので。

── 大学準硬式で甲子園にいくことができるとは思ってもいなかったのではないですか?

平澤さん:そうですね。「もう甲子園に行けることはないだろうな」と思っていました。高校女子野球でも私たちの時には甲子園開催もなかったので。甲子園への憧れは忘れてはいなかったですが、まさか大学でいけるチャンスがあるとは思ってもいませんでした。甲子園は野球人からすると憧れですよね。今からワクワクが止まらないです。

── 今回の大会はボールパーソンとしての参加ですが、憧れの甲子園の地に立つことができますね。

平澤さん:本当に憧れの甲子園でできるチャンスを下さったので、選ばれたからにはどんな形であれ選手に貢献したいです。そして私自身も本当に楽しみたいなと思います。全国トップレベルの選手たちのプレーを生で間近で見れる機会もそんなにはないと思うので、そこも楽しみたいです。

── 平澤さんの1学年下から高校女子野球決勝戦の甲子園開催が決まりました。OGとしてはどのように感じましたか?

平澤さん:本当に羨ましかったですね。決勝しかできないですが、甲子園を目指せるということが凄いことだと思うので。あとは私の妹が札幌新陽で野球をやっているので、「行くしかないでしょ」とは話しました。妹は今2年生で来年もう一回チャンスがあるので頑張って欲しいですね。

── 平澤さんは高校時代、札幌新陽高校女子硬式野球部で選手として活動していたとのことですが、高校女子野球とはどのような世界でしたか?

平澤さん:私は中学までは女子野球をしたことがなかったので、雰囲気とかも全く違うものだと感じました。最初は凄く不安でしたが、周りもモチベーションをあげて盛り上げてくれる女子ならではの雰囲気が凄く好きでした。

── 男子と一緒にプレーしていた時との1番の違いはなんですか?

平澤さん:実力の部分ですかね。中学までは男子との力の差があって、「勝てないな」と思うところもあったので…女子野球部ではみんなが同じくらいの実力からのスタートだったので、楽しみながらもレギュラー争いできる感じでした。女子の中でもシニアとかでやっていた子達とは実力の差はありましたが、「頑張って追いつこう」と思える差ではありました。

── 
平澤さんが高校3年の時、コロナの影響で大会が中止になってしまい、やりきれない思いもあったと思います。高校でやりきれない気持ちがあった中で、大学でもう一度野球を続けようとは思わなかったのですか?

平澤さん:昔からインテリアがすごく好きで、大学では建築を専門に学びたいと考えていました。大学選びもそこを第一に考えていたので、大学で選手を続けようとは考えていませんでした。それでも、野球に関われたらという思いがあったので、マネージャーとして準硬式野球部に入りました。

── マネージャーとして関わって、大学準硬式にはどのような魅力があると思いますか?

平澤さん:マネージャーの私も選手のみんなと同じ気持ちで目標に向けて活動できることです。選手をやっていた高校時代を思い出すような、真剣に練習しながらも、楽しさは準硬ならではかなと思います。

── 現在、関東地区女子野球連盟では『女子選手の受け入れ』を表明し、実際に男子の中で活躍している女子選手もいます。平澤さん自身もマネージャーとして野球を見ていて、プレーしたいと思うことはないのですか?

平澤さん:そうですね…練習とかを見ているとやりたくはなりますね。でも一緒に練習に混ざってキャッチボールをしたり、ノックのキャッチャーを手伝ったり、一緒に守備を守ったりはしているので、それくらいでちょうどいいのかなと。

── マネージャーといっても、選手経験があるからこそできることもやっているのですね。それでは最後に、高校生の女子野球選手に向けたメッセージをお願いします。

平澤さん:準硬式でもこのような甲子園に行けるチャンスもあって、全国大会も硬式と変わらないくらい大きな大会もあるので、マネージャーとしての活動も楽しいですということを伝えたいです。準硬は本当に楽しいです。やるからには選手もみんな真剣だと思うので、そこは凄くいいところだと思っています。

【11月13日】大学準硬式が甲子園で東西対抗日本一決定戦を開催

今回取材にご協力いただいたお二人がボールパーソンとして参加する甲子園大会は11月13日に開催されます。

甲子園出場経験を持つ選手や大学準硬式の全国大会で活躍する選手、投手では球速140km/h以上というような連盟が定める高い基準をクリアした選手が集まり、日本トップレベルの戦いが繰り広げられます

また、この日の午前中には全日本女子野球連盟が開催する女子野球の試合も甲子園にて行われる予定です。野球人の憧れである『甲子園』の地で行われる女子野球と準硬式野球の試合に注目してみてはいかがでしょうか

試合は12時プレーボール予定で入場無料で一般開放。YouTubeの配信も実施される予定です

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