「世界に向けて野球普及活動Vol.4」 地元秋田を拠点に世界を飛び回るトレーナー。ASEAN教育プログラムに抜擢された渡部真吉の活動
「世界に向けて野球普及活動」Vol.4
今回はASEANの教育プログラムの一環で東南アジア諸国で活動するトレーナーの渡部真吉さんにインタビューさせていただきました。
【渡部真吉(わたなべしんきち)】秋田県出身
Re:Set AKITA代表として秋田市内で活動。整骨院、介護を必要とする方のトレーニング、アスリートや子供の発育発達のための体作り・コンディショニングなど多岐に渡る活動を行っている。その活動の一環として、ミスユニバース秋田大会のボディメイクのトレーニング指導も持つ。東京や福岡など日本各地でも活動しており、ASEANの教育プログラムの一環として東南アジア諸国でコンディショニングの指導もしている。
「世界に向けて野球普及活動」Vol.4は東南アジア編ということで、
「東南アジアで野球は有名?」
「海外の人とどの様にコミュニケーションをとっているのか?」
「秋田県に拠点を置く理由について」といったことをインタビューさせていただきました。
世界でトレーナーとして活動をしている真吉さんのお話はとても面白く、海外での野球普及活動にとても興味を持ちました。
皆さんぜひ最後までご覧ください。
東南アジア諸国の野球普及活動 それぞれの特色は?
── ASEANで指導していることですが、主にどこの国にいくことが多いですか?
渡部さん:インドネシア、バリ島、フィリピンで主に活動しています。
── ASEAN向けに指導をしようと思ったきっかけは何ですか?
渡部さん:東都大学準硬式野球連盟と関わるご縁があり、そこでこのようなプログラムをやっていることを知り、自分自身が野球をやってきた中で、海外で活動するということに興味があったのでまずは見に行きました。
実際に現地で見ると、野球が盛んではないということを感じました。
まず野球場がなく、大体みんなサッカーをやっていました。
野球に育ててもらった者として、野球普及活動に何か貢献できないかと思ったのがきっかけです。
── 東南アジア地域では野球に対して「男子だから」「女子だから」といった考え方はありますか?
渡部さん:競技自体がメジャーじゃないので、男女関係なくみんな一緒にやってます。
インドネシアは人口が多く、子供も多いです。
『みんなでキャッチボールをやろう』というイベントをやった時も半分くらいは女の子でした。
日本は野球は男のスポーツというイメージが強いですが、
そういう先入観がないのでそこは良いと感じているところです。
── 海外の女性はフィジカルが強いイメージを持っているのですが、実際はどうですか?
渡部さん:アジア圏に関しては体格が良いというイメージはないです。
身長は高いですが、肉付きが良いわけではなく、ひょろっとしてるイメージです。
身体の作りの面で言えば、柔らかいというか関節が緩いという印象はあります。
向こうではタンパク質よりもご飯など、糖質・脂質がメインの食事です。
筋肉・骨を創るのはタンパク質なので、エネルギーとなる糖質・脂質を中心とした食事で
筋肉があまりついていないのかなというイメージです。
エビデンスがあるわけではないですけどね。
── 海外の人たちは運動神経が良いというイメージだったので、野球の動きさえ覚えればすごい強くなるのかなと思っていました。
渡部さん:そうですね…そこは東南アジアの国の中でもそれぞれ違います。
一番がっちりしているのは多分フィリピンかなと思います。
フィリピンではバスケットボールが盛んで、インドネシアだとバトミントンが盛んです。
バスケの選手だとがっちりしているイメージですが、バトミントンはマッチョのイメージはないですよね。
それぞれの国や地域の歴史的な成り立ちやDNAの部分と食事などの生活の部分で違いがあると思います。
最近のフィリピンではジムが流行っているということもあります。
去年か一昨年の世界でジムが一番増えた国がフィリピンだったと思います。
トレーニングをする・体を鍛えるという意識があり、『男らしさ』みたいなものを求める感覚も国民が持っていると思います。
格闘技とかもフィリピンは強いですよね。
「男は強いものだ」という意識があるため、体づくりにも影響していると思います。
東南アジア各国で活動を続ける渡部真吉さん 言葉の壁の克服方法は?
── 東南アジア各国に行っているとのことですが、いろんな国の言葉を覚えてから指導に行くのですか?
渡部さん:最初は通訳が入るとのことでした。
教育プログラムの内の夜の1時間くらいでコンディショニングの教育を担当していて、「体づくりってこうやるんだよ」「怪我しないためにはこうするんだよ」ということを資料としてパワポで持っていっていざ開始すると、3分くらいで「専門用語が多くてこれは無理だな」と言われていきなり丸投げされました。
ALTの友達がいたことがあり、なんとなくは英語は話せたので、気合いでやりとげました。
「This muscle is strong」みたいなものでしたが意外と伝わるんです。
体とかスポーツは共通言語になるので、ボディーランゲージというか動作で伝わる部分も多いんですよね。
身体のパーツの単語さえわかっていれば大丈夫でした。
東南アジアの人たちは大体英語が話せるので、そこに救われたかなという感じもします。自分も英語以外はわからないので。
「日本で英語を勉強してから海外に」と考える人は多いと思いますが、行ってみればなんとかなるよって感じです。
「英語できないから行かない」というのは凄くもったいないことで、まず行ってしまえばなんとかなると思います。
また、野球は感覚で表現することが多いですが、それはやっている人には伝わると思います。
海外に興味ある人は絶対に行った方がいいと思います。
ただ、アクシデントに対応できる応用力は必要だと思います。
何かを教えていて、日本人は真面目なので空気を読んでくれますが、向こうの人は全く空気を読みません。
「ここは日本じゃないんだ」という前提を飲み込める人なら平気です。
── 日本と海外で教える内容は違いますか?
渡部さん:基本は同じですが、それぞれの国の違いはあるのでそれは理解しておかなければいけません。
東南アジア系の人たちは筋肉量は少なく身体は柔らかいですが、アイランダー(ニュージーランド・フィジー系)の人たちは筋肉量が多く身体がすごく硬いです。
遺伝的な部分でも、吸収できる栄養素などは変わってくるのでそこの知識は必要になります。
── たくさん勉強しないといけないんですね。
渡部さん:勉強というか…日本人は勉強から入ろうとしますが、実際にやってみることが一番だと思います。
英語もそうですが、まず行ってみてればいいと思ってます。
それでわからないものをその場で覚えるという方法が一番身につきます。
── 「ハロー」くらいしかわからなくても大丈夫ですか?
渡部さん:全然大丈夫です!!それで共通言語があれば会話は成立します。
自分は身体という共通言語でした。
── 東南アジア以外でも活動することはありますか?
渡部さん:ありますね。
スリランカでも教育プロググラムでご縁があり、ナショナルチームのトレーナーとしてアジア大会に帯同させてもらいました。
そこで予選ブロックで日本と対戦する機会がありました。
スリランカ代表は日本代表にはとても敵いませんでしたが、日本人の自分がスリランカの国旗を纏い、相手チームとして日本の国歌を聞くという本当に貴重な経験ができたと思っています。
今回、東南アジアで活動する真吉さんのお話を聴くことができ、野球に馴染みのない地域の子供達に野球を教えるということはとても楽しそうだなと思いました。
真吉さんの話を聴くまでは、海外で活動するために勉強しないといけないことがたくさんあると思っていましたが、真吉さんの話を聴いて「まずは行って、やってみる」ということも大事なんだと気付かされました。何事もまずは挑戦してみるということが成功に繋がる鍵かもしれませんね。
最後に、世界で活動している真吉さんはなぜ秋田県に拠点を置いて活動しているのか聴いていきたいと思います。
世界各地で活動する中で地元秋田に拠点を構える
── いろんなところで活動している真吉さんですが、秋田に拠点をおいている理由はなんですか?
渡部さん:秋田で生まれ育ったからです。
他のところに行って仕事をすることもありますし、東京や他県、海外に行ったりもしています。
その中で、選んで秋田にいるという部分が半分、そうじゃない部分が半分という感じです。
── というと?
渡部さん:秋田のいいところとしては、まず固定費が安いということがありますね。
あとは、地域によってやりやすい仕事というものがあります。
現在は整骨院やリハビリだけの介護施設、それからここのジムをやっていますが、介護や整骨院は特に地域密着型なんですよ。
日本はWHO加盟国の中でも一番高齢化が進んでいる国で、その中でも一番高齢化進んでいる地域が秋田県です。
ある意味、世界一の場所でやっている思っているので、ここでやる意義は凄くあると思います。
他にはスポーツ専門の整骨院をやっているので、地域の子供達が怪我をしたらみてあげるとかもやってます。
人が多いところのほうがいいという考えはあまりないですね。
── 選んでいる部分じゃないというのはどういうことですか?
渡部さん:地元の居心地の良さがあるということですね。
今はインターネットがあり、人と会うことも制限されるので、『どこでもできる』なら自分が一番やりやすいところでやろうということです。
拠点はいくつか持っていますが、「どこ?」と聞かれれば「秋田」と答えます。
── 確かに地元に戻ると落ち着くということもありますよね。
渡部さん:そうですよね。ただ、秋田って遅れている部分もあるじゃないですか。
秋田は来たことのない都道府県ランキング一位とかになると思うんです。
初めての人を連れてくることも多いんですが、結構みんな気に入ってくれます。
魅力的だけど、知られていない地域でやるという意外性が注目されるきっかけにもなります。
秋田はあまり日の目を浴びることがないので、「地方でもできるロールモデル」ということを一秋田県民としてやりたいと思っています。
── 都心の方が便利なことも多いですが、地方には地方の良さがありますよね。
渡部さん:都会にも地方にもあるいは海外にもそれぞれ良さがあって、そうじゃない部分もたくさんあるので、その良いところだけをみていければ良いなと思います。
嫌なことを言っていたらキリがないじゃないですか。
── 地方の中でもやっぱり地元は特別感はありますね。
渡部さん:そうですよね。そこに理由はないと思います。
例えば、オリンピックでは無条件で日本の選手を応援するし、全国の天気予報とかはいなくても地元のを見るじゃないですか。
「理由がない」というのは一番強いことだと思ってます。
あえて選ぶのではなく根底にあるものなので消えることのないものです。
関東に行っても自分は秋田県民だし、海外に行こうが日本人で、そこのアイデンティティは変わらないです。
今の時代であれば、ずっと地元、あるいはずっと東京にいることもないと思います。
何をもって良いか悪いかというのはその時々で変わるので、特定の時期だけその場所に行くというのもありだと思います。
例えば秋田なら冬はいないとか。
ただ、競技とかスポーツにおいてはそうではないことも多いです。
地域によってやれる環境がないこともあるので。
── 最後に真吉さんの地方や海外に対する考えを聞かせてください!
渡部さん:地方だから、関東だから、日本だからと考える必要はなく、自分は『地球人だ』と思っています。
やりたいことをやりたい場所でやりたいようにやるということで頑張っていきます。
まだまだやりたいことはたくさんあるので。
── 本日はありがとうございました!
渡部さん:こちらこそありがとうございました。
真吉さんとの会話で「海外の子供達は先入観がないため、男女関係なくみんな一緒にやっている」ということが一番印象に残りました。
この記事をたくさんの方に見ていただき、少しでも真吉さんの活動に貢献できていたらいいなと思います。
今回ご協力いただいた渡部真吉さんが代表を務めるRe:Set AKITAのHPはこちらになります。