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鳥取県のガソリンスタンド内でLady’s仕様オーダーグローブを販売するNORIAの取り組み

 鳥取県倉吉市関金町、国道313号線沿いに鮮やかなイエローとレッドのガソリンスタンドがある。ここが、金田石油有限会社である。一見、よく目にする普通のガソリンスタンドだが、店内ではオリジナル野球ブランドであるNORIAノリアの商品を扱っている。『ガソリンスタンドにグローブ』ということだけでも類を見ない珍しいことであるが、NORIAではLady’s仕様のオーダーグローブ製造という他メーカーが行っていない取り組みも行っている。

野球用品NORIA公式サイト

 高校女子野球の甲子園開催が決定するなど、認知度や普及度は増加傾向にある女子野球だが、いまだに『野球=男のスポーツ』というイメージは根強く、競技人口の格差は大きい。

 鳥取県のガソリンスタンドの一角で店舗を構える『野球用品NORIAノリア』は、なぜLady’s仕様のオーダーグローブの制作を行っているのだろうか。ガソリンスタンド内に野球用品を扱うNORIA事業部を立ち上げた金田憲昭(かねだのりあき)さんに取材にご協力いただき、発売に至った経緯や、女性に合わせたグローブ作りのこだわりについて答えていただいた。

Lady’s仕様オーダーグローブ製作経緯

 1970年ごろから続く金田石油有限会社に野球用品を扱うNORIA事業部を立ち上げたのは2001年のこと。ご自身の名前『憲昭(のりあき)』から取り、メーカー名をNORIAとしたそうだ。当初は女性仕様の商品は扱っていなく、一般男性用の商品を販売していた。ある時、女性のお客様から「手のサイズを測定し、手の小さい自身にあったグローブを製作して欲しい」という依頼があり、女性を対象とした商品展開を始めることとなった。

 野球の競技人口における女性の割合は極めて少なく、各スポーツ店にも女性用の野球用品が並ぶことは少ない。Lady’s仕様のグローブを販売している現在でもお客さんの比率は一般男性用が8割、少年用・女性用・ソフトボール用を購入するお客さんを合計しても残りの2割程度だと言う。多くのメーカーが売れ筋である男性用の販売に力を入れる中で、サイズの大きいグローブを使用している女性も多い。金田さん曰く、「足のサイズが23cmの女性が27cmの男性用シューズを履いていたり、手のサイズがSサイズ相当の女性がLLサイズの手袋をつけているようなもの。手で扱うグローブはシューズの様な0.5cm刻みのサイズ調整は必要ないが、女性と男性では着用した時の感覚は大きく変わってしまう。」だそうだ。

 従来、サイズの大きいグローブを使用する際には、締め紐(ロゴが着いている手入れ口の部分)や掛け紐(親指や小指を入れる部分)をきつく締めるか、守備用手袋を着用することでグローブ内の隙間を埋めるという方法が一般的であった。しかし、それでも合わないことは多いため、金田さんは根本的な作りを変えることで女性の手に合うグローブを実現した。

手の大きさは違っても使うボールは同じ

 まず、金田さんは奥様の協力を得て、男性と女性それぞれの手のサイズを測定した。て全体の大きさ・指の長さ・太さにおいて差があることが分かる。(写真左参照)当然、個人差はあるが、金田さん自身も奥様もそれぞれ平均的な身長であるため、多くのお客さんが参考にすることができることだろう。それぞれの手に既存の男性仕様グローブを着用すると明らかにサイズが合っていないことが分かる。手首部分の隙間は多く、指のかかりも不安定で操作が難しい状態である。(写真右参照)NORIAでは、皮の裁断や縫製時に工夫することで、この様な着用時の不安定感を解消した。

男女の手の大きさの比較と通常のグローブ着用イメージ(男女)

 女性の手の大きさに合わせたグローブを作ろうとした時、基本的には少年用の型に近づけていく作業だそうだ。しかし、成人女性と男子小学生を比較すると、平均身長にしておよそ10cmほど女性の方が大きい。手が小さい女性と言えど、少年用のグローブでは小さすぎると言うことになる。

 また、少年野球では通常よりも小さいボールを使用するが、成人女性が競技に参加する場合、軟式・硬式双方において男性と同じサイズのボールを扱わなければならない。そのため、単純にグローブ全体の大きさを小さくしただけではグローブにとって最も重要な捕球動作に支障が出てしまう。NORIAでは、捕球部分などの全体的な大きさを変えずに、『手の小さい人でも大きいグローブを遊びなく使える』ということをコンセプトに女性仕様の商品を販売している。

 上記コンセプトを実現するために、主に3箇所の構造を変化させた。

 1つ目は親指と小指の掛け紐部分。女性の指は短く、男性用グローブを使用した際に親指や小指が掛け紐によって支えられる本来の位置まで届いていないことが多い。掛け紐をきつく締めることでは対応できなかった問題だが、NORIAでは掛け紐を手入れ口に近づけるという方法で対応している。

 2つ目は人差し指・中指・薬指の指入れ部分。使用者が調整することができない部分であるため、従来のグローブでは守備用手袋の着用という方法で対応するほかなかった。この部分に関してはミシンでの縫製時に少しきつめに縫うことで女性の細い指でもフィット感が得られる作りとなっている。

 3つ目は手入れ口のバンド部分(メーカーロゴが着いている部分)。先述の写真の通り、女性が男性用のグローブを着用した時、この部分に大きな隙間があることが分かる。締め紐をきつく締めることによって微調整は可能であるが、女性の手首に会うほどまで締めることはできない。この問題は、バンド部を裁断する際に通常よりも短くすることで対応している。

 この様な工夫によって、NORIAの Lady’s仕様グローブは作られている。実際のグローブを金田さんと奥様が着用すると、従来の商品との差は明らかである。(写真中・右参照)また、従来製品とLady’s仕様の2つのグローブを比較しても、捕球部分を含めた全体的な大きさは変わっていない。(写真左参照)小柄な選手でも手のサイズに合い、尚且つ男性と同じサイズのボールにも対応できるグローブであるということがよく分かる。

Lady’s仕様商品着用イメージ(男女)

 本記事内で使用している画像は、全て金田さんからご提供していただいたものであるが、これらはNORIAのHP内にも掲載されている。NORIAでは単に『女性用』として売り出すのではなく、これらの画像や着用者の身長・体型などを明示しながら、従来のグローブとの違いを丁寧に説明している。現在NORIAでは通信販売により購入するお客様が多く、実際に着用してからの購入というケースは少ないものの、HP上での丁寧な説明によりお客様も自身と合っているかを判断することができる。

NORIA Lady’s仕様女子ベースボール用 紹介ページ

有名でなくても良いものを NORIAの戦略

 野球経験者の多くが感じることはあることであるが、一般的なスポーツ店の店頭に並ぶグローブは有名大手メーカーがほとんどを占めている。鳥取県のガソリンスタンド内に店舗を構え、通信販売を中心とした販売を行っているNORIAは、大手に対抗するためにどの様な戦略をとっているのだろうか。金田さんに答えていただいた。

 多くのプレーヤーが大手メーカーのグローブを使用している大きな理由として、『有名選手がそのメーカーを使用している』ということがあげられる。野球用品市場に大きな影響力を持つプロ野球選手は、用具メーカーと契約をしていることが多く、グローブの無償提供や契約金の支払いを受けていることもある。テレビや新聞、雑誌などの各種メディアから彼らの上手で格好良いプレー姿は自動的に発信されていく。同時に、使用しているグローブも多くの人の目にとまることとなり、製品やメーカーのイメージも向上していく。有名選手の力があれば、その選手に対する憧れの感情も商品の購買意欲へと繋がる。アマチュア野球選手がグローブを購入する動機として、『憧れの選手やプレーを参考にしている選手が使用している』ということの比率は大きく、皮の品質や匂いを購入の基準としている顧客は少ないのが現状である。また、『価格が高いほど良いものだ』と考える人も少なくはない。

 一方で、NORIAでは大手に対抗できるほどのスポンサー料や広告費を捻出することは難しく、有名選手の力を使うという手法は取れない。商品を購入するお客様のほとんどはインターネットやクチコミによって偶発的にサイトや店舗を訪れていると言う。その様なお客様に、NORIAの商品が魅力的であると思わせるために、目を引くカラーリングや皮・作りの良さ、先述のように少数でも困っているお客様の声に対応するという戦略を展開している。

 金田さんが特に重要視しているのは、皮の品質の高さや縫製を始めとする作りの良さだ。NORIAでは、皮の質や匂い、グローブの作りから“品質の高いグローブ”を判断しているお客様や、“品質の高いグローブ”の判断基準を理解し、プロ使用モデルでなくとも良いものがあるのではないかと考え、それを探しているお客様をターゲットとして、大手にも負けないグローブの製造を行っている。

 一般的にグローブの製作には牛の皮を使用する。皮は一頭の牛の各部位から取ることができるが、個体や部位によって、品質の低いものはどうしてもでてきてしまう。NORIAではその様な部分を除き、良いものだけを使用している。また、裁断や縫製といった製作の各段階でも丁寧できちんとした作業を行うことで品質の高いグローブが完成する。NORIAでは、広告費用をかけていない分、高品質のグローブを一般的な価格よりも安価で販売することが可能となっている。

増加する女子野球選手 更なる発展に向けて

 男のスポーツとしてのイメージが強い野球だが、女子高校野球の加盟校は増加しており、今夏の全国大会は甲子園での開催も決定している。各種SNSやYouTubeによって投打においてレベルの高い女子選手の様子が発信されているが、陸上競技など他スポーツの記録を見ても生まれ持った体格を起因とする男女の差は大きい。トレーニングや動作解析など、科学的な手段を用いることができる現代において、女子選手本人たちの努力は必要不可欠であるが、競技レベルの向上には外的な要因も重要となる。

 数多くある要因の一つに女子選手向けの道具の増加があるだろう。テニスやゴルフ、バレーボールなどの女子選手が活躍している競技は、いずれもおしゃれなウェアや女性でも使いやすい道具などが多く販売されている。魅力的なカラーバリエーションがあり、手の小さい女性でも使いやすいグローブを作っているNORIAの様な取り組みが、今後の女子野球普及に向けて重要な役割を果たすこととなるだろう。

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