1. HOME
  2. COLUMN
  3. LIFESTYLE , SPECIAL
  4. 現役引退。加藤優が歩んできた野球人生。

現役引退。加藤優が歩んできた野球人生。

2021年8月7日。全日本女子硬式野球選手権大会も、17回目を迎えます。

この大会で1人の女子野球選手が現役を引退します。

彼女の名は加藤優。女子野球界でもとびきり有名な彼女ですが、

これまでの歩みを語ってくれました。

本記事では、女子野球選手としての加藤優選手の半生を振り返っていきます。

【加藤優(かとうゆう)】1995年5月15日生まれ。神奈川県秦野市出身。
少年野球チームの監督をしていた父の影響で5歳から野球を始める。中学2年の時にボーイズリーグの女子選抜チームという形で女子野球の世界に足を踏み入れ、ソフトボール部、女子野球の名門企業チーム「アサヒトラスト」、女子プロ野球を経て昨年からはGOODJOB女子硬式野球でプレー。女子野球界で大きな影響力を持つ存在であったが、今年8月に行われる全日本女子硬式野球選手権大会を最後に引退することを発表しています。

ボーイズリーグ女子選抜チームへの参加 女子野球の世界へと足を踏み入れる

── 女子野球の世界に足を踏み入れたのはいつですか?

加藤選手:中学2年の時に初めてボーイズリーグの
女子選抜チームが結成され東日本・西日本で対決しました。
この大会が女子野球の世界に足を踏み入れた第一歩目です。
この年が初めての試みだったとのことなのでタイミングがよかったなと思います。

── どの様な気持ちで望みましたか?

加藤選手:初めて女子同士で集まるとなった時はどんなレベルかもわからなかったので、
「同じ女子には負けたくない」という気持ちで望みました。
しかし、気の強い子が多かったので、気後れしてしまったなという思い出はあります。

── 女子選手同士でプレーするということで成長できた部分も大きかったですか?

加藤選手:中2・中3で選抜チームに参加し、切磋琢磨しながら成長することができました。
「次会った時にはみんなすごく上手くなっているだろうな」
という気持ちで普段も頑張れたので、
同じくくりで競い合うということはすごい大事なことだなと感じました。

── 加藤さんは中学生以降は男女別でプレーした方が良いと考えていますか?

加藤選手:私自身は中学まで男子とやっていた中で、
ゲームに入ってしまえば結構できたなと思っています。
でも体力的な面ではどうしても劣ってしまう部分はあったので、
環境さえあれば男女別れたチームでやるのがいいのかなと思います。
私の父が中学女子の硬式野球チーム「西湘Future」を作って現在30人くらいの部員がいます。
私も見に行ったり指導することもあるのですが、同じ女の子同士が切磋琢磨しながら、
生き生きやっている姿を見るとすごく良いのかなと感じます。

── ちょうどその時期はソフトボール日本代表の五輪優勝がありましたが
選手として影響を受けた部分はありましたか?

加藤選手:中学2年生の時に初めて女子野球日本代表のテストを受けて、
そこからは目標を「女子野球」としていました。
オリンピックでソフトボールの盛り上がりを見て、すごいとは思いましたが、
ソフトボールを自分自身がやるということは頭にありませんでした。
女子野球もいつかオリンピック競技になったらいいなと思っていました。

── 中学生で日本代表トップチームのテストに挑んだんですね。

加藤選手:はい。
テストには落ちましたが日本代表の合宿に練習生として呼んでもらい、
とてもいい経験をすることができました。
その時に「女子日本代表に入りたい」とすごく思うようになりました。

高校では一度ソフトボールを経験するも野球へ再転向 本格的に女子野球の世界へ

── 高校でソフトボール部を選んだ経緯を教えてください。

加藤選手:当時神奈川県に女子野球部がある高校はありませんでした。
東京都の通える範囲内にはありましたが、その当時は私自身も自分の意思が弱かったように思います。
世間的にも「女子は野球よりもソフトボール」という認識は強く、
父からも「ソフトからなら野球に戻れる」と言われたので決断しました。
家族からの言葉は大きかったと思います。

── ソフトボールと野球にギャップは感じましたか?

加藤選手:言葉に表すのは難しいですが、
実際にやってみると野球との違いは大きいということを肌で感じました。
私自身、「女子野球の日本代表」が目標だったので、
途中でやめて女子野球の世界に行こうと思いました。

── ソフト部をやめアサヒトラストに入部したんですよね?

加藤選手:はい。
一年の秋頃に部活はやめ、女子野球チームアサヒトラストに入部しました。
その時は日本代表メンバーがゴロゴロいるチームでした。
女子野球をあまり知らない状態でいったので、レベルの高さに度肝を抜かれました。
そこでリスペクトする先輩の志村亜貴子さんに出会いました。

── 志村亜貴子さんはどの様な選手ですか?

加藤選手:めちゃめちゃ足が速い選手です。
今までそこまで足がはやい女性の選手に出会ったことがなかったので、
初めて練習に行った時は衝撃を受けました。

── どういったところをリスペクトしていますか?

加藤選手:学校の先生という仕事と野球を両立させていて、
大変だと思うのですが、私からすると完璧です。
当時キャプテンを務めていたのですが、
多くを語らずに背中で引っ張るというところがすごく格好良くて、
ストイックなところに憧れを持ちました。
同じ外野手なので、ずっと追いかけていた存在です。

── 志村さんから教わったことも多かったのですか?

加藤選手:多くを語らない人なのですが、私は結構怒ってもらいました。
私は自分を出せないタイプだったので、
「もっと積極的に」「もっと自分が自分がでいいんだよ」
とか自分に足りないところを言っていただきました。
それがすごく記憶に残っています。

当時私は高校生で、
他のチームメンバーは大人だったので気後れしていた部分がありましたが、
そういった言葉をかけてもらえたのは助かったなと思います。

── 女子プロを目指したきっかけはありましたか?

加藤選手:高校3年生の時にプロとアマチュアが対戦する
ジャパンカップという大会に初めて出場し、一回戦でコールド負けしました。
プロ誕生当初は高校生に負けたりすることもあったので、
魅力的に感じてはいませんでしたが、その大会でプロのイメージがガラッと変わりました。
身体もすごくできているし、技術的な面でも圧倒的な力を見せられて、
レベルが高いところで自分を磨きたいなと思い、テストを受けました。
その試合から2年後のことですけど…(笑)

── 女子プロ生活4年間で一番成長を感じた部分はなんですか?

加藤選手:気持ちのコントロールは上手くなったかなと感じています。
私自身は調子が落ちてくると気持ちも落ち込んでしまったり、
上手くいかなくなった時にすごく態度に出して腐りきっていた時期もありました。
もう声も出さないみたいな。
そういう部分を全てコントロールできるようになったことで、
練習にも試合にも影響が出なくなり、
そこが整ったことで自分の課題も冷静に見ることができるようになりました。

── 現在の落ち着いた加藤選手の姿からはイメージできませんね。

加藤選手:いろんなものにやられていたと思います。
あまり休みのなかったので、どんどん余裕もなくなっていました。
プロ2年目くらいがどん底だったのですが、
そのあたりでメンタルトレーニングを受けたり、自分で行動したことが良かったと思います。
バッティングの面でいいコーチに出会えたことなど運もあったのですが、
バッティングという自分の武器を持てたということは
野球選手としてすごく良かったのではないかなと思います。

── 色んな環境を経験してきた加藤選手ですが、
女子野球選手が成長できる環境とはどの様なものだと考えますか?

加藤選手:体力はすごく落ちやすいのが女性アスリートのきついところだと思います。
そのため、毎日練習できるということはレベルアップに必要不可欠かなと思います。
練習時間というのはどうしても必要ですが、
それを確保するのは現状だと難しいところでもあるので、選手一人一人の努力が重要かなと思います。

── 現役引退はいつ頃から考えていたんですか?

加藤選手:悩んだ時間は多かったですね。
自分の中では、目標がなくなった時・モチベーションが
上がらなくなった時が引退の時期だと考えていました。

── 現役を続ける中で目標としていたことはなんだったんですか?

加藤選手:日本代表だったと思うんですよね…
女子プロ野球時代はトライアウトが受けれなかったので少しブレたかなとも思うのですが。

── 現役選手に終止符を打つことを決めた理由を教えてください。

加藤選手:昨年の日本代表選考合宿に参加しました。
自分の持ち味・強みを発揮できた上で不合格となってしまったのですが、
その時に悔しさよりもやり切ったという思いが強く残ったんですね。
落ちてもう一回行こうと思うのではなく、あれだけやってダメなら仕方ないなと初めて思えました。
代表選考結果を待つ時期にGOOD・JOBへの入部を決めましたが、
不合格が決まり目標を失った形になってしまいました。
今年一年はやり切ろうという気持ちもありましたが、
夏の全国大会ででスパッとやめようと決断しました。

── 現在までの野球人生において貫き通したと言えることはありますか?

加藤選手:何よりも野球が第一優先だということですね。
音楽教室に通っていたこともありましたが、野球をやりたいから辞めたり、
野球の練習があるからとディズニーランドを途中で帰ったことがあります。
何よりも野球を第一でやってきたことが、今まで貫き通したことですね。

── 女性として「野球選手加藤優」としてやってきて良かったと思いますか?

加藤選手:プライベートを野球に侵食されすぎないようにはしていました。
現役を30歳まで続けていたとしても、女子プロ野球選手としてずっと続けたとしても
その間に結婚してもいいなと思っていたので。
メンタルトレーニングとかを受けた中で割り切ってやれるようになりました。
女性としても、人間としても野球をやってきて良かったなと思います。
野球選手としてのあり方は思ってたのとは違う感じにはなりましたが、
結果的に親も喜んでくれたし、結果も残せたかなと思っています。

── 最後の大会にかける想いを教えてください

加藤選手:このチームで締めくくれることは幸運です。
メンバーも明るくて気さくで、楽しみながらも真剣というこのチームでいけるところまでいきたいです。
自分自身の役目をはたせるようにしていきたいです。

── ファンの方々へのメッセージをお願いします!!

加藤選手:21年間野球を続けて、たくさんの方々に支えられたと感じています。
引退も悩みましたが、自分の中でちゃんとした野球選手として終われるために決断をしたので、
暖かく見守っていただければなって思います。
最後の大会に向けて準備をしており、いい顔で終われるようにがんばりますので、
ご声援のほどよろしくお願いします。

いよいよ開幕する全日本女子硬式野球選手権大会。女子野球選手として21年間野球を続けてきた加藤優選手がこの大会を最後に引退します。彼女の引退は女子野球界にとって一つの分岐点となるでしょう。近年盛り上がりを見せ、今後も発展していくであろう女子野球ですが、選手として加藤優選手を見ることができるのは最後になります。

野球を愛する彼女の想いがこの記事を読んでくれた皆さまに届き、ファンの方々一人一人が声援を送り、その声援が彼女の勇気となることを手助けすることができたら幸いです。

関連記事

vivinaru

ヴィヴィナル

vivinaruとは?

vivinaru(ヴィヴィナル)は、スポーツをしているしていないにかかわらず、全ての女性の人生の彩りを豊かにする情報を発信する女子スポーツメディアサイトです。「ウェルネス」「ライフスタイル」「トレーニング」「スポーツコラム」「イベント」など多彩な情報を発信していきます。