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初心者・女子選手も活躍中 防衛医科大学校準硬式野球部の運営体制

「女子準硬式野球準備委員会」を立ち上げ、「女子選手の積極的な受け入れ」を表明した関東地区大学準硬式野球連盟。

『栃木さくらカップ』への参加や練習会の開催など、女子選手が活躍しやすい環境づくりを推し進める準備委員会ですが、実際に女子選手が活躍しやすい環境とはどのようなものなのか、その環境を今後作っていくことは現実的に可能なのか、まだまだ可視化できていない部分です。

今回は防衛医科大学校で現役選手として活躍する女子選手3名にお話を伺い、女子選手が大学準硬式野球で活躍するためにはどのような環境を整えていくことが必要なのかを考察していきます

インタビューにご協力いただいた3名の選手
【伊藤 優里(いとう ゆり)】秋田県出身。二塁手。
看護学科自衛官コース3年。小学校1年生から野球を始め、中学・高校ではソフトボール部に所属。大学進学後、準硬式野球部に入部。

【平川 りょう(ひらかわ りょう)】宮崎県出身。中堅手。
看護学科自衛官コース2年。小学校4年生で野球を始め、中学ではソフトボールに転向。高校では野球・ソフトボールから離れるも大学で再び野球部に所属。

【鈴木 夏緒(すずき なお)】埼玉県出身。捕手・一塁手。
看護学科技官コース2年。小学校4年で野球を始め、中学では部活動と女子野球のクラブチームでの活動を両立。高校では硬式野球部で男子と共に活動。

過去にも女子選手が多く活躍した防衛医科大学校準硬式野球部の環境を紐解いていきます

自衛官・看護師を目指す特殊な環境下で準硬式野球部への入部を決意

── 本日はよろしくお願いします。まず、防衛医科大学校はどのような学校なのですか?

伊藤選手:私たちが所属する看護学科は、将来的に自衛隊の看護師を目指す学科です。私と平川は自衛官コース、鈴木は技官コースにそれぞれ所属しています。

自衛官コースは自衛官になるコースで、1年生から水泳訓練や野営訓練を行い、学生は全員寮生活をしています。在学中も公務員という扱いになります。卒業後は駐屯地にある自衛隊病院や駐屯地の医務室に勤務することになります。

技官コースは訓練などはないですが、その他の勉強は自衛官コースと一緒に行います。技官コースのみの寮があり、入寮するか自宅から通うかは選ぶことができます。卒業後は防衛医科大学校病院に勤務することになります。

── 相当特殊な学校ですね。それでは、皆さんの進学の経緯を教えてください。

伊藤選手:小学校の時に障害者の子と仲良くなり、医療系の道に進みたいなと思っていました。お父さんが自衛官で、この大学のことを教えてくれてオープンキャンパスにも連れていってくれました。文系でも自分で勉強を頑張れば受験ができる、寮生活なので寂しくないということが決め手でした。

鈴木選手:看護師になりたいという夢があったことが第一です。その中で、防衛看護や災害看護という専門的な分野も学べるということ、保健師の資格も一緒に取れるということを魅力に感じ、防衛医科大学校を選択しました。

平川選手:私は小さい頃からずっと人の命に携わる仕事がしたいと思っていました。実家の近くに駐屯地があったことから自衛官とかレスキュー隊員に憧れがあり、母が看護師だったので看護師にも憧れていました。迷っていたところ、中学校の先生が防衛医科大学校を教えてくれて、「ここだったらどっちにもなれる」と思い、ここ以外は行きたくないと思うようになりました。中学2年生くらいにはもう進路を決めていました。

── 準硬式野球部で男子選手と共に活動する皆さんが準硬式野球部に入部したきっかけを教えてください。

伊藤選手:高校までソフトボールをやっていて燃え尽きちゃったので、大学では全く別のスポーツをやろうとも考えていたのですが、仮入部でやっぱり野球がやりたいとなったので入部を決めました。先輩方もすごく良くしてくれて、部の雰囲気もすごく良く、当時女子選手も看護学科の3年生の先輩が1人、2年生の先輩が2人いたので入りやすかったです。

鈴木選手:私は単純に野球を続けたかったということが一番です。草野球やクラブチームという外のチームという選択肢もあったのですが、看護の勉強との両立は難しいかなと思い、比較的時間の調整のしやすい部活動という選択をしました。準硬式というものを全く知らなかったので、新しいものに挑戦してみたいという気持ちもありました。

平川選手:私は高校で野球もソフトボールもやっていなかったのですが、仮入部でバットを振った時に『私やっぱり野球が好きなんだな』と思いすぐに入部を決意しました。小学校の時に男子から「女のくせに」というようなことを言われたトラウマがあったのですが、女性の先輩もいたし、紅白戦でも男女関係なく楽しくやっていたので、ここだったら好きな野球を続けられるかなと思いました。

── 実際に活動してみていかがでしたか?

伊藤選手:男子と一緒にプレーするので、体力差や筋力差、技術の差はすごく感じますが、「ここが良い、ここが悪い」ということを同期の間で教えあったり、「こういうメニューをやったらどうですか」というような学年を超えてのコミュニケーションも多いと思っています。また実習やテストも考慮してくれて、私も今は実習期間なのでお休みをいただいています。

鈴木選手:高校の時は顧問の先生から『指導される』という感覚でしたが、大学ではチーム内で『アドバイス』をしながら技術を高めあっていくという感覚が強いです。それぞれ勉強もあって限られた時間の中で、時間を見つけて工夫して練習することができるようになったと思います。自主性が高まったんじゃないかなと。

初心者や女子も活躍できる防衛医科大学校の運営体制は?

── 野球部の運営体制を教えてください。

伊藤選手:基本的には学生運営で、医学科の選手が3年生の夏から4年生の夏まで学生監督を務めています。

── 学生運営となると高校での部活とは大きく異なると思いますがいかがですか?

伊藤選手:「これをやれ」と言われて練習するのではなく、選手みんなで考えてやることに良さを感じています。先輩・後輩間の仲も凄く良く、お互いに練習メニューについて意見を言い合ったり相談したり、いい上下関係だと思います。

── 高校野球とは異なり、大学野球では女子選手でも公式戦出場のチャンスはあります。女子選手として活動する皆さんは試合には出ているのですか?

伊藤選手:公式戦はレギュラーの人たちが出るのですが、練習試合や交流戦では満遍なくみんなだしてもらっています。

鈴木選手:コロナで公式戦自体がほとんどないのですが、私はスタメンを取るということを目標としています。高校の時は公式戦に出場する資格すらなかったので、はっきりとした目標ができてやりがいを感じています。

── 防衛医科大学校では多くの女子選手が活躍していますが、他の準硬式野球部と「ここが違う」と思う部分はありますか?

伊藤選手:やっぱり女子選手が多いので、入ってきやすいということはあると思います。実際に入った後も初心者や女の子に対して声をかけてくれることも続けやすい要因になっていると思います。

平川選手:寮生活ということで身近に相談できる人がいるということは大きいと思います。特に優里先輩(伊藤)は部屋が隣なので、何かあった時にはすぐに話ができます。男子の中で野球を続けるとなると何かと不安や悩みが多いので…

準硬式という選択肢を知ってもらい、迷ったらまずは体験に

── 関東地区準硬式野球連盟では“女子準硬式野球準備委員会”を立ち上げ、女子選手集めての練習会の開催やさくらカップへの参加といった活動を行っています。皆さんは参加はしなかったのですか?

伊藤選手:その活動は知っていましたが、コロナの影響で参加は難しかったです。看護学科ということや全寮制ということもあり、クラスターのリスクもあるので。

── 今後、大学準硬式で女子選手が活躍するためにはどういった環境の整備が必要だと思いますか?

鈴木選手:“女子野球”の環境自体は整ってきているかなと思っています。小学校や中学校の時も女子だけが集まって行われる大会があって、高校の女子野球部が増え、大学でもこのような活動があるので。その中で、まだみんなには伝わっていないのかなと思うことはあります。実際に入部してみてからわかることも多いので。

伊藤選手:私もまずは『準硬式という選択肢もある』ということを知ってもらう、『女子でもできる』『女子でも試合に出れる』ということを知ってもらえればと思います。私自身、大学に入るまで大学準硬が女子でも試合に出れるということを知らなかったので、世の中の中学生・高校生は知らない子が多いのではないかと思います。

平川選手:私は高校生の時は準硬式野球そのものを知らなかったので、まずは準硬式野球を知ってもらうと同時に、女子が実際にどのように活動しているのかを伝えていくということが大事かなと思います。

実際の活動のイメージができるということは大事なことかなと思います。私も大学ではやっても息抜き程度と思っていて、中高で野球やソフトをやっていた子も看護や医療系の大学では忙しくて部活に入ることも躊躇してしまうこともあると思います。文武両道は準硬の魅力の一つでもあるので、『こういう形でできる』ということを伝えていければいいなと思います。

── それでは最後に、準硬式入部を考えている・迷っている後輩の女子選手に向けてメッセージをお願いします。

鈴木選手:男子と一緒の活動なので、入りにくいと思っている人は多いのかなと思います。ただ、私が今まで一緒にやってきたチームの人たちは、練習メニューや接し方も他の部員と同じように扱ってくれて凄く受け入れてくれました。勇気を出していってみれば受け入れてくれる環境はあると思います。少しでも気になるなら体験にいってみてほしいです。

平川選手:私は高校3年間本当に運動をしていませんでしたが、それでも何とかついていっているので、まずはやってみるということが大事だと思います。ブランクがあったので、本当に最初は不安でしたが、何やかんやで何とかなるなと。

伊藤選手:体験だけでもいってみたら気持ちが変わってくると思います。ちょっとでも気になっていたら体験・見学に行く、気になることがあったら聞いてみるということが大事なことだなと思います。大学は勉強が主なので部活動との両立は忙しいですが、その中でもうまくやることはできます。「看護学生だからできない」とかの偏見を持たず、まずはやってみてほしいです。

「気付くきっかけ」は準硬式で女子選手が活躍できるということに気付くということ

今回の選手たちの場合は、運動部への入部が絶対ということが気付きに繋がっていました。

“部活の強制”という一見するとネガティブな要因からのスタートですが、どの選手も入って良かったという良い結果に繋がっています。

「入りやすさ」は準硬式野球部へ入部することのハードルの低さのこと

今回の場合、女子選手が過去にも活動していたという前例と、先輩に女子選手がいたということが入部のハードルを下げていました。

「続けやすさ」は入部後に活動を継続して行うための要因

今回の場合、初心者や女子選手にも教えてくれる・声をかけてくれるという部の雰囲気と気軽に相談できるという環境がここにあたります。

今回の取材からは「気付くきっかけ」と「入りやすさ」と「続けやすさ」の3つの要因が揃うことで女子選手は大学準硬式野球の世界で活躍できると考えられます。しかし、この3要因を揃えることは簡単なことではなく、一部活で揃うことは非常に難しいことだと思います。

ここで、女子硬式野球準備委員会の活動が活きてきます。

一大学・一部活では女子選手を受け入れる環境を完全に整えることは難しいですが、関東地区の大学が連携することで3つの要因を揃えることは可能になります

準備委員会では女子野球の大会への参加実績を作り、入部に関しても相談しやすい環境が構築できています。

大学でも野球を続けたいと考えている女子選手は、準硬式野球も選択肢の一つに入れてみてはいかがでしょうか?

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