データから読み解く女子野球の拡がり 〜大学生編〜
「女子野球は拡がっている」
「女子野球人口は増えている」
近年よく耳にする言葉で、実際に高校の女子野球部や社会人クラブチームが増加していることからも実感できることである。しかしその具体的な数値を目にする機会は少ない。
今回は、大学女子硬式野球の全国大会参加チーム数・競技者数を元に、女子野球に関するいくつかのグラフを作成し考察していく。
※大学数・部員数のデータは全日本女子野球連盟HP上のデータを引用しています。
全国大会参加大学数と部員数の推移
回数 | 年 | 参加 | 優勝 |
1 | 2011 | 7校 | 平成国際大学 |
2 | 2012 | 6校 | 尚美学園大学 |
3 | 2013 | 4校 | 平成国際大学 |
4 | 2014 | 7校 | 尚美学園大学 |
5 | 2015 | 7校 | 尚美学園大学 |
6 | 2016 | 7校 | 尚美・平国 |
7 | 2017 | 7校 | 至学館大学 |
8 | 2018 | 7校 | 尚美学園大学 |
9 | 2019 | 8校 | 尚美学園大学 |
10 | 2020 | 10校 | 尚美学園大学 |
11 | 2021 | 8校 | 大阪体育大学 |
12 | 2022 | 8校 | 尚美学園大学 |
まず、大学女子硬式野球の全国大会の参加チーム数と優勝大学の記録がこちら。中体連の女子部員数や高校の大会参加校数が2010年ごろから急激に増加していることと比較すると大学女子硬式野球は横ばいの推移を続けている。
2015年以降の選手数の推移がこちら。2015年から2016年にかけては急増しているものの、以降は少しずつの減少を続けている。新規大学の女子硬式野球部立ち上げなど、大学女子野球にも普及・発展の波がここ数年きているだけに、絶対的な選手数の増加が必要となる。
甲子園や東京ドーム、ナゴヤ球場での開催で注目を集め、チーム数・選手数共に急激な増加を見せている高校女子野球だが、今後の更なる発展を考えた時、大学女子野球の発展も一つの鍵となる。次項では『高校・大学の比較』という点からさらに考察していく。
高校女子野球の拡大に対し、大学は横ばいの推移が続く
高校・大学の大会参加チーム数を比較したグラフがこちら。右肩上がりに増加している高校と大学の差が広がっていることが視覚的に分かる。折れ線グラフは大学と高校の格差(高校÷大学)を表す。2015年に2.7倍だったその差は2021年には5.38倍と格差はおよそ倍にまで拡大している。
同様に、選手数に着目して高校・大学を比較したグラフがこちら。高校生が2015年から2021年にかけて約2倍に増加しているのに対し、大学は横ばいの推移を続け、格差は6.60倍まで拡大している。
高校と大学のデータを比較すると、大学女子硬式野球は近年『拡がっている』とは言い難い結果になった。この結果からは『大学で硬式野球を続けたい女子選手の絶対数に対して十分な環境が整っている』と言えるのか、『高校まで硬式野球を続けた女子選手が大学で続けられる環境がない』と解釈するべきなのか判断することはできない。
また、中体連・高校のデータを比較した際、中体連の選手数の増加から数年遅れて高校数の増加が見られたように、大学女子野球もここから急激に伸びていくことも考えられる。現に、大学選手権へは未参加のため、今回のデータ中には換算されていないものの、活動を開始している大学も増加している。
今年から10月開催となった全日本選手権では、高校・大学・社会人の垣根を超えて“女子野球日本一”を争う。昨年大会ではIPU環太平洋大学が優勝するなど、同大会では大学勢の活躍が目立ち、6大学が参加する今年も上位成績が期待される。
女子野球界トップレベルの戦いが繰り広げられているものの、外部からの注目度は高校やクラブには劣る大学女子野球。全日本選手権での活躍や新規参入大学の増加による更なる発展に期待したい。