データから読み解く女子野球の拡がり 〜中学野球部編〜

「女子野球は拡がっている」
「女子野球人口は増えている」
近年よく耳にする言葉で、実際に高校の女子野球部や社会人クラブチームが増加していることからも実感できることである。しかしその具体的な数値を目にする機会は少ない。
今回は公益財団法人日本中学校体育連盟(以下、中体連)の加盟校・加盟生徒数調査集計表の2001年から2021年の21年間のデータを用いて、女子野球に関するいくつかのグラフを作成し考察していく。

2010年を分岐点に急激に増加した女子部員と減少した男子部員
まず初めに、軟式野球部に所属する女子部員数と全体に対する女子の比率(女子部員数/男女部員数)のグラフがこちら。2001年時点で600人だった女子部員は2021年には3,856人とおよそ6.4倍に。男子と比較した比率で見るとおよそ13.7倍。それでも2.60%と決して高いとは言えない数値だが、この21年間で着々と“女子野球選手”が増えていることが分かる。

ちなみに、男子部員のグラフがこちら。2001年には321,629人いた部員は2021年には144,314人と約45%の人数に。少子化の影響もあるが、男子の運動部合計で見ても2001年が1,545,567人で2021年が1,064,628人とその変化率は約69%にとどまっている。このデータはボーイズやシニアなど、学校外で活動している選手が含まれていないため、中学の「野球人口が半分になった」とは言えないものの、異常な減り方をしていることには間違いない。

2010年以降に女子部員が急激に増え出したこととは対照的に男子部員は急激に減少している。女子部員が増えた大きな要因は、やはり2010年に開幕した女子プロ野球だろう。女子野球選手の目標としても大きな役割を果たした女子プロ野球リーグ。女子プロ野球が活動休止となった今、NPB傘下チームをはじめとする社会人クラブチームの存在や高校女子野球の甲子園・東京ドーム開催などが女子選手たちの新たな目標となり、今後も競技人口が増えていくことに期待したい。
男子は野球で女子はソフトボール? 中学校における両者の現状
「男子は野球で女子はソフトボール」というイメージは、女子野球が拡まってきた近年においても未だ根強い。では、実際の部員数で見るとどれだけの差があるのだろうか。20年で6.4倍になった女子野球はソフトボールとどれほど差を縮めているのだろうか。中体連のデータで見ると以下の様になる。

2001年に100倍以上あった野球とソフトボールの女子部員数の差は、2021年には10倍以下に。とは言え、まだまだその差が大きいことはグラフにすると一目瞭然である。前項で野球部の女子部員は急激に増えていると表現したものの、ソフトボールと同軸で表すとまだまだ多いとは言えないのも女子野球の現状である。
「ソフトが減って野球が増えている」と聞いた時、「ソフトボールの選手が野球に移行しているのでは?」という疑問が思い浮かぶ。ソフトボールと野球の女子部員の合計と運動部全体の女子部員に対する比率を表したグラフが以下の通り。

絶対数として減少していることに加えて、全体に対する比率も同様に減少していることが分かる。野球とソフトボールを一緒くたに考える訳ではないが、ソフトボール出身の女子野球選手も多い中で、「女子野球選手が増えている」というデータのみを見るのではなく、このデータは目を背けてはならないのではないだろうか。
2001年以降の中体連のデータを見ると、「女子野球選手が増えている」ということが明確に分かる。そしてこれは、2010年の女子プロ野球開幕による影響が大きな要因となっていると推測される。女子選手たちの一つの目標として、女子プロ野球の存在が広く認知されたことの影響は計り知れない。“女子野球”の存在が認知されることが競技人口の増加に直結する。今後、更なる女子野球の盛り上がりのためにも、様々な発信を行っていきたい。
野球 (男子) | 野球 (女子) | ソフト (女子) | 運動部 (女子) | |
2001 | 321,629 | 600 | 64,128 | 1,084,732 |
2002 | 314,022 | 1,320 | 62,487 | 1,187,528 |
2003 | 312,811 | 709 | 58,433 | 999,605 |
2004 | 298,605 | 621 | 57,950 | 982,018 |
2005 | 295,621 | 791 | 56,293 | 962,113 |
2006 | 302,037 | 1,066 | 58,487 | 968,397 |
2007 | 305,300 | 855 | 59,049 | 952,947 |
2008 | 305,958 | 1,137 | 58056 | 949,046 |
2009 | 307,053 | 1,333 | 57472 | 947,680 |
2010 | 291,015 | 1,505 | 54,696 | 921,646 |
2011 | 280,917 | 1,658 | 53,821 | 920,378 |
2012 | 261,527 | 1,886 | 50,449 | 920,274 |
2013 | 243,664 | 1,555 | 48,228 | 916,348 |
2014 | 221,150 | 1,982 | 45,588 | 901,361 |
2015 | 202,470 | 2,677 | 43,232 | 903,661 |
2016 | 185,314 | 2,438 | 41,847 | 887,818 |
2017 | 174,343 | 2,686 | 39,623 | 873,922 |
2018 | 166,800 | 2,890 | 37,858 | 842,170 |
2019 | 164,173 | 3,302 | 35,860 | 833,433 |
2020 | 158,555 | 3,606 | 32,662 | 807,884 |
2021 | 144,314 | 3,856 | 29,676 | 779,521 |
参考:公益財団法人日本中学校体育連盟 加盟校・加盟生徒数調査集計表
https://nippon-chutairen.or.jp/data/result/