女子野球に火を灯せ! 女子野球タウン廿日市を拠点に活動する『はつかいちサンブレイズ』
近年、女子野球のチーム数や競技人口は増加傾向にあり、高校女子野球は夏の甲子園開催や春の東京ドーム開催でも注目を集めました。また、今夏の全国大会では史上最多となる49チーム(連合チーム含む)が参加するなど、全国各地に女子野球が拡がっていることが伺えます。
今回紹介するはつかいちサンブレイズは、女子野球タウン・広島県廿日市市を本拠地とし、中四国地方初の企業チームとして、女子野球の普及・発展を目指し、2022年から本格的に始動しました。
はつかいちサンブレイズでは女子硬式野球界の発展に貢献することはもちろん、全国で女子野球を広めたい自治体の見本となること、女性が活躍できる場所の拡大、佐伯高校女子硬式野球部の生徒たちを始め、野球を続けたくてもその環境になかった選手たちのために野球に関われる環境を整える、ということをコンセプトの中核としています。
今年からサンブレイズで活動する戎嶋美有選手と村松珠希選手に、実際の生活やチームとしての今季の目標についてお話を聞かせていただきました。
【戎嶋美有(えびすじまみゅう)】
2000年2月13日生まれ。和歌山県出身。内野手。
[経歴]
神村学園高等部(2015-2017)
レイア(2018)
京都フローラ(2019-2020)
はつかいちサンブレイズ(2022-)
【村松珠希(むらまつたまき)】
1997年7月17日生まれ。大阪府出身。捕手。
[経歴]
福知山成美高校(2013-2015)
レイア(2016-2017)
京都フローラ(2018-2020)
阪神タイガースWomen(2021)
はつかいちサンブレイズ(2022-)
Contents
女子野球タウン “はつかいち” での活動 地域密着型のチーム運営とは?
── 今日はよろしくお願いします!
戎嶋選手:よろしくお願いします。
村松選手:よろしくお願いします。
── それでは早速、お二人がサンブレイズに入団した経緯を教えてください。
戎嶋選手:私は女子プロ野球リーグを退団した後、一年間野球はやっていませんでした。その時にサンブレイズ立ち上げの話を岩谷監督からいただいて、入団を決めました。岩谷監督とは京都フローラ時代に選手として一緒にプレーしたこともあり、尊敬している選手だったので。
── なるほど。岩谷監督と一緒にプレーしたかったという部分が一番の理由ですか?
戎嶋選手:そうですね。ちょうど野球をどこかでやろうと考えていたタイミングで声をかけていただいたので決めました。
── 村松選手はいかがですか?
村松選手:サンブレイズに入団する前は阪神タイガースWomenでプレーしていました。戎嶋選手と一緒で、私も岩谷監督と2年間プレーしていて、その時からずっと尊敬している選手でした。なのでサンブレイズ立ち上げの話を聞いて、力になりたいなと。阪神にも所属していたので迷いはありましたが、中四国初の企業チームということや、社長の話を聞いて魅力に感じたので入部を決めました。
── 廿日市市は女子野球タウンに認定されていますが、地元の方からの声援や雰囲気の部分で廿日市が女子野球タウンだと実感することはありますか?
戎嶋選手:広島県全体で見ても野球に熱いというか、街を歩いていてもカープのグッズを持っている方はたくさんいます。そんな中で廿日市市も女子野球タウンに認定されているので、実際に活動を始めてから地域の方に応援されているなという実感はあるので、廿日市から女子野球を盛り上げていきたいなと思っています。
村松選手:練習場所の近くの住民の方々にも「頑張ってね」と応援してくれる声もかけていただいています。球場のすぐ近くには幼稚園があるのですが、大会の日程も把握してくださっていたり、子供たちが散歩で練習を見にきてくれたりします。「地域密着」とは簡単に言えることですが、私たちが今まで野球をやってきた中でここまで身近に感じたのが初めてで、愛されているなという実感はあるので、それは凄く力になっています。
── その幼稚園とは交流も多いのですか?
村松選手:そうですね。園長先生と監督がイベントごとにやりとりをしているので、幼稚園でイベントがあったら私たちも参加させてもらったりとか、こっちでイベントがあればきてもらったりとか、良い関係が築けているなと思います。
── 幼稚園のイベントというと?
村松選手:私は卒園式に参加させてもらいました。2. 3月には凧揚げ大会にも呼んでいただきました。
グッズ販売や椎茸栽培 サンブレイズ選手の仕事内容は?
── 選手の皆さんはそれぞれどういった仕事をされているのですか?
戎嶋選手:それぞれ担当が別れていて、
・グッズ販売
・インスタやYouTubeなどのSNSを中心とした広報
・球場管理を含め野球教室などのイベント
・農業
・営業
などの仕事をしています。
── お二人はどの担当になるのですか?
戎嶋選手:私は球場管理です。
村松選手:私はグッズ販売です。
── では、まずグッズ販売の業務内容について教えてください。
村松選手:今はサンブレイズとしてスタートしたばかりなので、“サンブレイズ”という名前を知ってもらうことを大事にしています。例えばサンブレイズのロゴが大きく入っていたりとか。タオルやTシャツなど、基本的には定番の商品を販売しており、その受注であったり、梱包・発送までを担当しています。
── それでは次に、球場管理・野球教室について教えてください。
戎嶋選手:普段練習で使っている球場周辺の掃除、球場の貸し出し、野球教室をやっています。今後はチームとしてのイベントもたくさん行なって行きたいので、その計画も行っています。
── 今までに行ったイベントはありますか?
戎嶋選手:グラウンドの外野の芝貼りイベントを行いました。ボランティアという形で100名を超える地域の方々と一緒に外野の芝貼りを行いました。
── 次に、農業について教えてください。農業と言っても色々あるとは思いますが、どのようなことをやっているのですか?
戎嶋選手:菌床で椎茸を育てています。収穫したものは近くの産直市場で販売したり、この間の芝貼りのイベントの際にも販売していました。
── 椎茸栽培というと専門的な知識が必要そうですが、椎茸栽培のノウハウは持っていたのですか?
戎嶋選手:ゼロです(笑)地域の菌床を購入したところの方に栽培の方法を教えていただきました。
初のトーナメント大会で準優勝 ここまでの雰囲気と1年目の目標
── 1年目のチームですが、ここまで活動してきていかがですか?
戎嶋選手:まだ設立してからそんなに日は立っていないのですが、すごく明るいなということが1番の印象です。
村松選手:いろいろな選手と野球をできることが楽しいですし、新鮮だなと感じています。いろいろなところから選手が来ていて、一緒にやったことのない選手が多いです。私と戎嶋選手が2年間同じチームでやっていたように、女子野球界だと同じ選手とやることも多いので。
── 確かに様々な経歴の選手が集まっていますね。年齢層も広いですよね?
村松選手:そうですね。一番上が31歳で、一番下は高卒上がりの18歳なので。女子野球選手の場合、30歳までやっているとベテランと言われますが、私たちのチームには2名います。女子プロ野球から長年活躍している方達とフレッシュな18歳の選手だったり、大学でやってた子もいるので、本当に色々な人がいて個性的だなと思います。
── そこまで年齢差があると、若手選手がベテラン選手に緊張してしまうみたいなこともありそうですが、そこの距離感はどうですか?
戎嶋選手:緊張はしてないと思います(笑)
── 先日の子規杯では準優勝でしたが、チームとしての手応えはいかがでしたか?
戎嶋選手:そうですね。一番上が31歳で
── もちろんチームとしては優勝を目指していたので、全国制覇を狙う中で足りない部分があったのかなと思います。
戎嶋選手:攻撃ではチャンスで点を取りきれなかったり、守備でもここは抑えられたんじゃないかという部分がありました。細かい部分にはなるのですが、そういった部分を詰めていかなければ上では勝っていけないので今後の課題かなと思います。
── 村松さんはいかがですか?
村松選手:ルビーリーグで何試合かはしていたのですが、トーナメントに出場するのは初めてだったので、1試合1試合全てに課題があったと思います。いい意味でも悪い意味でもリーグ戦とトーナメントでは戦い方が変わってくるので、キャッチャーとしてその部分にすごく直面しました。個人的にも課題を見つけられるいい機会になったと思います。
── 客観的に見ると初の1年目で準優勝は好スタートという様にも見えますが、それぞれ感じた課題は多いということですね。それでは、その課題を踏まえて今年の大会の目標をお願いします。
戎嶋選手:もちろんチームとしてはどの大会も優勝目指して戦います!!まだまだ新しいチームなので、試合をするごとに課題を見つけ、試合ごとに成長して強くなっていければいいなと思います。
村松選手:子規杯は四国・中国・九州地区の大会だったので、まだまだ全国には強いチームがたくさんいると思います。全国レベルの強いチームとの対戦も楽しみながら、広島で応援されるチームになりたいなと思います。
── 次に、お二人の女子野球界全体に対する思いをそれぞれ聞かせてください!!
戎嶋選手:今、女子野球が段々認知されてきて、甲子園だったり東京ドームだったりでもできるような環境になってきていますが、まだまだ女子野球を知らない人はたくさんいると思うので、その人たちに本当に一回見ていただきたいなと思います。
── 1回見てもらえれば魅力は伝わりますか?
戎嶋選手:伝わると思っています!!プレーで魅力を伝えていくことが選手でやっている以上の責任・使命だと感じています!!
── 村松さんお願いします。
村松選手:私たちが小学校で野球をやっていた時、女の子一人で珍しいと見られがちでした。『女の子が当たり前にできる環境』『女の子がやっていても普通なんだよという環境』は私たちが認知されることで作れると思っています。女子プロ野球の時からこの気持ちは変わらず、ずっと目指している場所です。
── それはプレーで魅せていくということですか?
村松選手:そうですね。男子よりもレベルが低いとか、スピード感だとか勝てないところはたくさんありますが、そこではない魅力、今の女子野球ファンが思ってくれている様な、楽しそうだとか明るく野球を楽しんでいるという部分を全面に出していければなと思います。
── 最後に、サンブレイズの魅力を教えてください!
戎嶋選手:女子野球全体の魅力でもあるとは思うのですが、楽しく明るくやるというのが1番だと思います。中四国を引っ張っていく存在にもなりたいですし、全国でも戦えるチームになりたいと思っています。強いことはもちろん、格好いいなと思ってもらえるようなチームだと思います。
村松選手:今すごくいいこといったので、これが全てだと思います(笑)
女子野球タウン・廿日市を拠点として、今年から本格的に始動したはつかいちサンブレイズ。
女子プロ野球を創設期から支えたレジェンドから高卒1年目のフレッシュな世代まで16名の好選手が集まり、初のトーナメント大会となった子規杯で準優勝という結果を残しました。
高校野球・プロ野球共に野球熱は高いものの、“女子野球”は他地域と比べて盛んに行われていなかった広島県。女子野球タウンとして自治体からの後押しもあり、はつかいちサンブレイズを中心に“女子野球県”としても有名になっていくことが期待されます。
その第一歩として、今年のサンブレイズの躍進に注目です!!