女性アスリートのセカンドキャリア 阿南市役所「野球のまち推進課」龍田美咲
突然ですが、皆さんは「セカンドキャリア」という言葉を聞いてどのようなイメージが思い浮かびますか?
「セカンドキャリア」とは「第二の人生における職業」のことで、会社員や公務員が定年後にする仕事のことをイメージする人も多いと思いますが、スポーツ選手の引退後の職業も「セカンドキャリア」に入ります。
スポーツ選手の場合、他の職業に比べると引退の時期というのは早いと思います。
スポーツを全うし、引退した後の人生の方が長いと考えると、「セカンドキャリア」はとても大事なことです。
今回は「女性アスリートのセカンドキャリア」について、インタビューをさせていただきました!
女性スポーツ選手は男性と比べて選手寿命が短い傾向にあります。
もちろん、全員が全員というわけではないですが、出産や育児をきっかけに引退をすることも多いかと思います。
約1年間、お腹に赤ちゃんを抱え激しい運動などができない中で、出産してすぐに現役復帰ということはすごく大変。
出産を例に上げましたが、怪我で現役引退せざるを得ないということもあります。
今回インタビューにご協力いただいたのは元女子プロ野球選手の龍田美咲さんです。
【龍田美咲(たつたみさき)】1999年1月5日生まれ。徳島県那賀郡那賀町出身。
小学1年生の時に野球を始め、中学2年生から本格的にピッチャーをやり始める。今年の高校女子野球甲子園決勝戦で日本一となった神戸弘陵高校出身で、3年時にはエースとして初優勝を成し遂げた。高校卒業後は女子プロ野球の世界に進み、育成球団レイアから一年でトップチームの京都フローラに昇格。若きエースとしてチームを牽引した。しかし、2021年1月に怪我などを理由に女子プロ野球の引退を表明。現在は徳島県阿南市役所「野球のまち推進課」で野球普及活動などを行っています。
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龍田美咲さん現役時代の実績
2016.7 | 17歳 | 全国女子高校野球選手権大会 優勝投手 |
2016.8 | 17歳 | 女子プロ野球入団テスト合格 育成球団レイア入団 |
2017.9 | 18歳 | ティアラカップ3位決定戦 プロ初勝利 |
2018 | 19歳 | 京都フローラへ昇格 |
2018 | 19歳 | チーム最多タイの5勝 太田幸司賞受賞 |
2019 | 20歳 | 自身初の2桁勝利達成 |
2020 | 20歳 | プロ通算100奪三振を達成 |
2021.1 | 21歳 | 現役引退 |
2021年まで女子プロ野球 京都フローラで活躍されていた龍田美咲さんは、怪我が原因で現役を引退されました。龍田さんが選んだ「セカンドキャリア」は地元の市役所職員。
徳島県阿南市役所「野球のまち推進課」で野球普及活動を行っています。
さらに来年度から徳島県にできる中学女子軟式野球部の監督に就任することが決まっています。
そんな龍田美咲さんに
「女子プロ野球引退後、どんなお仕事をされているのか?」
「指導をする上で心掛けていることは何か?」
「母校、神戸弘陵高校の甲子園開催&優勝について」
についてインタビューさせていただきました。
現役でスポーツを続けている女子選手にとって、セカンドキャリアとはとても気になることだと思います。
是非最後までご覧ください。
Contents
「プレーをする立場」から「プレーをする選手を支える立場」へ
── 龍田さんは今どんなお仕事をされていますか?
龍田さん:現在は市役所に務めていて、ティーボールの指導をしています。
── 対象は何才くらいですか?
龍田さん:幼稚園児、保育園児、小学生です。
── 大変なことはありますか?
龍田さん:女子プロ野球選手時代にティーボール教室をやったりしていたので、教えることに関して大変と思うことはありませんが、その当時は先輩がメインに行っていたので、現在は私がメインで行っていくことが大変と思う時があります。
── 今はお一人でご指導されてるんですか?
龍田さん:基本的には1人で行っています。
── 女子プロ野球時代と現在で、お仕事をしていて違いなどは感じますか?
龍田さん:野球をすることが仕事だった女子プロ野球時代は自分のことがメインでしたが、今は運営だったり、指導者として選手を育てていく立場になったので、その辺の違いは感じています。
── 現在はティーボールの指導されてるということで、指導者になろうと思ったきっかけは何ですか?
龍田さん:私が今所属している部署が【野球のまち推進課】というところで、そこでベースボール型スタート事業というのをやっていて、それでティーボールをやるようになりました。
指導者となった今、女子野球に感じることは?
── 子供たちに指導する上で、心掛けていることはありますか?
龍田さん:今は幼稚園児、保育園児、小学校の低学年の子供達を中心にティーボールを教えているのですが、子供たちがわかりやすいように言葉を選んで指導することです。
あとは子供たちが「楽しかった」と思えるような時間にすることを心掛けています。
最近だとマスクをして指導することが多く、それだとやはり壁を感じてしまうので、怖がらせないように笑顔と明るい声で接することも心掛けています。
── 指導していて実際に嬉しかったことはありますか?
龍田さん:できるだけ全員と会話をするようにしているのですが、会話の中で「できた!」と笑顔で言ってきてくれる時はとても嬉しいですし、やりがいを感じます。
── 徳島県の女子野球選手は多いですか?
龍田さん:多いと思います。
── 女子中学軟式野球チームの監督に就任されると聞きました。どういったきっかけでチームができたのでしょうか?
龍田さん:現状、小学生から中学生に上がる段階の環境がなくて野球をやめてしまうという女の子たちが多いです。
そこをやめずに続けて行ってもらうためには、まずは中学校の女子軟式野球部を作った方がいいのではと思い、今回の女子中学野球チームの創設に至りました。いずれは硬式野球部も作りたいと思っています。
徳島県の高校にはまだ女子硬式野球部は1つもなく、愛媛の新田高校、高知の室戸高校、高知中央高校に行くしかありません。
それですと野球をやめてしまう子も多いので、まずは中学でしっかり続けられる環境を作り、またその先も続けられる環境を作っていきたいなと思っています。
── ちなみにグラウンド環境などはどうなっているのでしょうか?
龍田さん:グラウンドもボールもあり、野球ができる環境は整っています。
── 何度か体験会を行っていると思いますが、小・中学生に指導という面で大変だったことはありますか?
龍田さん:コミュニケーションが難しいなと思います。
その時は小学生が多かったのですが、難しい言葉で教えても伝わらないので、伝えるという面で苦戦しました。
── 高校生に教える方が教えやすいですか?
龍田さん:年齢が近ければ近い方が伝えやすいところはあるかなと思います。
── 監督として活動するのは楽しみですか?
龍田さん:楽しみです!でもやはり不安といいますか、心配なこともあります。
── というのは?
龍田さん:女子プロ野球界に入ってから性格が少し変わって、誰にでも話しかける性格になってしまったので、中学生に引かれないか心配です。
── 新チームはどんなチームにしていきたいですか?
龍田さん:まずは当たり前のことを当たり前にできるチームにしたいと思っています。
チーム名に「Lilies(リリーズ)」とありますが、【ユリの花】という意味で、ユリの花の花言葉が「純粋」という意味が込められています。
「純粋に野球を楽しんでもらいたい」という意味が込められているので、選手たちにはそれを忘れずにプレーしてもらいたいですし、地域の人やたくさんの人に愛されるチームにしていきたいなと思っています。
2016年夏の大会優勝投手が語る、高校女子野球甲子園開催について
── 今年、女子野球史上初の甲子園開催で龍田さんの母校の神戸弘陵高校が優勝を飾ったと思いますが、卒業生としてそれをみてどうでしたか?
龍田さん:自分たちの代でも一回甲子園開催の話が出て盛り上がりました。
私自身もすごく楽しみにしていましたが、結局はできなかったので、女子が甲子園でプレーをすることは夢で終わるんだろうなと思っていましたけど、今回こうして開催されて、しかもその1回目で母校が優勝をしたというのは、それはそれで嬉しかったです。
ついにここまできたか!という嬉しい気持ち半分、自分の代でもやりたかったなという気持ちが半分でした。
しかし、開催されたということは女子野球界にとって、ものすごくいいことだと思いますし、これからの女子選手たちの目標にもなるので、これからも続いていって欲しいなと思います。
これから出会う選手たちがそこを目指してやっていってくれたらもっともっと嬉しく思います。
── 龍田さんの活動も、徳島インディゴLiliesのことも全力で応援しています。本日はありがとうございました。
龍田さんが来年から監督を務める女子中学軟式野球チーム
「徳島インディゴLilies」は現在メンバー募集中で、9月25日に体験会を行う予定です。
徳島県で野球をやりたい、始めたいと思っている女子選手の皆さん、また近くにそういった子がいるという読者の皆さん、ぜひこの記事を拡めていただければと思います。
まずは好きなことを精一杯 龍田さんに学ぶセカンドキャリアの考え方
プロや社会人でスポーツ選手を続けるためには体の調子やメンタルを安定させ、常に結果を出し続けることが求められます。
そこに年齢は関係なく、いくつになろうと結果を出し続けられれば稼ぐことはできますし、そうでなければ続けることもできません。
そしてスポーツを仕事としている以上、いつか必ず「現役引退」を経験しなければならないのです。
今回インタビューにご協力していただいた龍田さんは女子プロ野球選手として好きなスポーツを全うし、現役を引退した後も野球を拡めていく活動をすることで野球に携わっています。
このことをたくさんの人に伝えることで、将来のことを考える学生達にまずは好きなスポーツを精一杯やってみようと思ってもらえたらなと思います。
また、「セカンドキャリア」で悩んでいる現役女性アスリートや、「選手を支える立場」になりたいと考えている、思っている方にも、こんな風にやることもできるんだ!と知ってもらえたらのではないかないと思います。
この記事を読んで、「働く」ということに対して前向きに考えるきっかけになってもらえたらいいなと思います。